法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です

法学館憲法研究所

Mail info@jicl.jp
 
今週の一言
憲法情報Now
 憲法をめぐる動向
 イベント情報
 憲法関連裁判情報
 シネマ・DE・憲法
 憲法関連書籍・論文
 ■今日は何の日?
憲法Voice
研究所・客員研究員紹介
中高生のための憲法教室

憲法文献データベース
日本国憲法全文
リンク集
 
事務局よりお知らせ
賛助会員案内
メールマガジン
ご意見フォーム
サイトマップ

憲法情報Now<憲法関連書籍・論文>

 

論文「裁判員裁判によって裁判官を変えられるか」

H・T

 特集「裁判員制度と裁判官の意識―裁判官をどうやったら変えられるか」の中で、高田昭正教授(大阪市立大学)が、標記の論文を掲載しています。
 裁判員制度の実施に先立って法曹3者の連係のもとに行われた全国で500回以上行われた模擬裁判の経験を共有、検証するために裁判所レヴェルでまとめられた内容を紹介しつつ考察を加えています。裁判員制度の実施によって裁判員制度が採用される裁判だけでなく、刑事裁判全体の構造の変化=改善を展望した論文です。

 模擬裁判は当初、従来の刑事裁判の手法である「解明型」と呼ばれる手法によって試みられました。「解明型」とは、刑事裁判における実体的真実の発見を重視し、検察官が気付いていない細かな事実まで指摘して訴因の追加・変更を求めたり、両当事者に求釈明を通じて更なる立証を促すことなど、裁判所が訴訟主導的に権限行使してきた方式です。高田教授は、これを直裁に、裁判官の「職権主導型」裁判と呼んでいます。

 しかし、このようなやり方で裁判員裁判を行うと、裁判官は法概念の説明に時間を要し、肝心の裁判員同士の議論は余り活発に行われないという状況を生みました。そこで、裁判官自身から反省が加えられました。即ち、裁判員裁判の審理は、両当事者の主張・立証をそのまま多様な視点から「評価」し、検察官の立証が果たされたかを「判定」することを中心とするものにすべきだというものです。このような「解明型」から「評価型」への転換に異論はなくなっていると紹介されています。

 教授は、これは理論的には当事者主義構造という原点に回帰するものであり、実践的には口頭主義や事件主義の効率化に資するものと評価しています。

 教授はその上で、当事者追行主義の原点への回帰を本当に果たすための課題を提起しています。一つは、この主義が効率化に資する技術ゆえに相対的な原則となり、効率化のために公判前整理手続の運営が「職権主導型」にならないようにする工夫です。もう一つは、裁判員制度が適用にならない圧倒的な裁判(97%)が依然として職権主導型でなされることから裁判員裁判も職権主導型になることへの懸念です。そこで教授は、逆に裁判員裁判の「評価型」裁判こそ、刑事裁判の全体を変えていくインパクトにする必要があるとして、具体的な課題を提起しています。裁判員裁判が刑事裁判にもたらす本質的な変革を理解するうえで貴重な論文です。

【論文情報】「季刊 刑事弁護」59(2009年autumn 現代人文社から刊行)所収。

                              記

<事務局より>
【WEBサイト「市民の司法−裁判に憲法を!」】

論者の高田教授は、当研究所事務局が事務局となっているWEBサイト「市民の司法
−裁判に憲法を!」において、8月31日付けで下記の「今週の発言」を寄稿してお
られます。全国第1号の裁判員裁判について意義深い考察をしておられます。

 

「全国第1号」の裁判員裁判が行われた!

http://www.saiban-kenpo.org/hatugen/backnumber/090831.html

【連続講演会「日本国憲法と裁判官】

次回第6回は、お2人の(元)裁判官に刑事裁判のあり方について語っていただきま
す。

10月21日午後6時より 伊藤塾東京校にて

虎井寧夫氏 「刑事事実認定の実際と裁判員裁判」

堀内信明氏 「刑事裁判における裁判官の役割」

http://www.jicl.jp/jimukyoku/backnumber/20090805.html

 

[今週の一言][憲法情報Now][中高生のための憲法教室][憲法文献データベース][事務局からのお知らせ]
[トップページ]