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書籍『世界の裁判員―14か国イラスト法廷ガイド』

K・T

日本で行われた最初の市民参加による裁判をご存知ですか?1928年陪審法が施行されるよりも前に(多分)、こんな“さいばん”がありました。

「おかしなはがきが、ある土曜日の夕方、一郎のうちにきました。(中略)
  あなたは、ごきげんよろしいほで、けっこです。
  あした、めんどなさいばんしますから、おいで
  んなさい。とびどぐもたないでくなさい。(後略)」

そう、1924年に刊行された宮沢賢治作『注文の多い料理店』に収録された「どんぐりと山猫」です。賢治作品の舞台はイーハトーヴ国であるとされていますから、厳密には“日本で行われた”とはいえないのかもしれませんが。

何故、司法の“プロ”ではない、市民が裁判に加わる必要があるのか。どんなメリットがあるのか。「どんぐりと山猫」も、主人公たる“市民”一郎の、“プロ”にはない視点が画期的な解決を生んだ物語、と深読みできなくもありますまい。

市民参加による刑事裁判は、“現実”の日本でもこの8月から開廷され、この間、経過や結論について逐一報道されてきました(当研究所も協力して開設した「WEB市民の司法―裁判に憲法を!」もあわせてご参照下さい)。

さて、今回ご紹介する書籍『世界の裁判員―14か国イラスト法廷ガイド』では、かくも多種多様な“市民の刑事裁判参加”が世界にはあったのか、ということにまず驚かされます。市民だけのチームでプロの裁判官を交えず判断する陪審、市民チームにプロの裁判官が一緒に判断する参審、と大きく二つに分けても、同じ“陪審”・“参審”の制度の間ですら、そのあり方や市民の参与の程度は国ごとに実にさまざま。「その違いをよく見てみると、裁判制度とその歴史、裁判に関わる人々の役割、法廷内のコミュニケーションや意識の違いが現れ」(本書pA)「それぞれ異なる社会の中で、それぞれ異なる司法のあり方が象徴的に出ている」(同)。
本書でとりあげられた国は、アメリカ・イギリス・オーストラリア・フランス・イタリア・ポルトガル・ドイツ・デンマーク・フィンランド・ブラジル・ガーナ・中国・韓国そして日本、の14カ国。米欧にとどまらず、地域的にも実に幅広い。
いまでも“プロ”の法律家がカツラを着用する国もあれば、ジーンズ姿の検察官もいる国がある。権威を重んじるつくりの法廷もあれば、明るく機能美を追求した法廷がある。それらがイラストによって視覚的にもよく分かります。

これだけ多種多様でありながら、しかし、たった一つだけ、全ての市民参加の刑事裁判制度において、共通して追求されていることがあります。「裁判では、クロかシロかを決めるのではない、クロかクロでないかを決めるのだ」ということ。このことを、裁判に参加する市民に対し、“プロ”たる裁判官は、繰り返し強調して伝える努力をしています。「合理的な疑いの余地」がある限り、被告人は無罪。
逆の言い方をすれば、このたった一つの目的を実現するのに、これだけ多様な方法が存在し、かつ試されてもいるということでしょう。

司法のあり方、その根本的な指針とすべきは、日本においては日本国憲法です。これまでの日本の司法は、残念ながらその指針から外れたところで冤罪も生んできました。一方、憲法理念を司法の場で活かすべく努力を傾けてこられた裁判官の方々がいます。そんな方たちを講師に迎える連続講演会「日本国憲法と裁判官」(9/8名古屋9/9東京)をあわせてご案内いたします。

【書籍情報】神谷説子・澤康臣著 日本評論社 2009年6月 (定価 本体価格2,000円+税)

※文中の「どんぐりと山猫」は、宮沢賢治著『注文の多い料理店』(角川文庫)を参照いたしました。

 

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