法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です

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憲法情報Now<憲法関連書籍・論文>

 

書籍『自立する葦』

H・T

 裁判員制度の開始や、足利事件の再審などで、裁判に対する国民の関心が高まっています。しかし、関心はまだまだ表面的なものにとどまっているかのように見えます。例えば、「官僚依存からの脱却」という言葉が頻繁に使われており、先週の党首討論でも一つのポイントになっていました。しかし、この言葉は、「政治家の行政官僚からの脱却」という意味でしか意識されていません。

 しかし、実は、司法が「司法官僚から脱却」するという根本的な問題が厳存しています。その奥には、「政治からの脱却」の問題があります。憲法が究極の価値とする「人間の尊厳」を実現するためには、裁判官の職権行使の独立(憲法76条3項)が不可欠です。これなくして、三権分立は絵に描いた餅になります。本書は、司法官僚による官僚司法行政に抗して、裁判官の間での自由闊達な議論の実現を目指し格闘してきた裁判官たちの肉声を伝えています。裁判官の独立をめぐって裁判所の内部にどのような問題があったのか、その歴史が豊富に記録されています。

 本書によれば、裁判所にも、1960年代の末頃までは、上下の隔てなく、自由にモノが言える雰囲気がありました。しかし、その頃から、最高裁判所の判事の任命を通じ、あるいは直接政治からの圧力などで、裁判官の独立が危うくなり、いわゆる「司法の危機」の時代が始まりました。最高裁事務総局の司法官僚による統制が裁判官の独立を侵害し始めました。68年、自衛隊の憲法適合性を問う長沼訴訟を担当した札幌地裁の福島重雄裁判長にたいする平賀書簡問題はその嚆矢となりました。71年4月の熊本地裁の宮本康昭判事補の再任拒否事件により、危機は深まりました。このような動きの中で、全国の裁判官たちが司法の独立とあるべき裁判所像を求めて自主的に集まって議論したのが、本書を刊行した「全国裁判官懇話会」であり、71年の10月に第1回の会合が持たれました。規約を持つ恒常的な組織ではなく、その時々に参加者を募り、05年までに19回開催されました。会には、我妻栄氏、田中二郎氏など日本を代表する多くの法学者が参加し議論してきました。

 本書は、会を背負って来た裁判官が、その時々において会でどのような議論がなされたかを分かりやすく紹介するとともに、木佐茂男氏(九州大学教授)など研究者のコメントを掲載しています。

 近年、最高裁の閉鎖性は少しずつ是正されて来ています。裁判官懇話会の粘り強い努力の現れでもあります。しかし、今回の司法改革では最高裁事務総局のあり方には根本的なメスは入らず、判検交流などの重大な問題も見送られました。真に国民のための裁判所を作るにはどうすればよいか、考える素材がたくさんつまっている書籍です。

 なお、懇話会の全記録を収めたCD-ROMが付いています。

【書籍情報】編集発行人 全国裁判官懇話会全記録刊行委員会 判例時報社 2005年2月(定価 本体価格1,600円+税)

<事務局より>
法学館憲法研究所は、裁判官懇話会に参加した多数の裁判官を含む元裁判官たちの連続講演会を開催中です。東京会場では7月16日には鈴木經夫氏と宮本康昭氏が講演します。

詳しくはこちら
東京での鈴木經夫氏と宮本康昭氏の講演会
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