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書籍『ここだけは聞いておきたい 裁判員裁判―31の疑問に答える』

K・T

5月21日、裁判員制度がスタートしました。この制度に対する国民の不安・疑問の声もよく耳にするところです。本書は、制度開始に先立つ本年4月、日本評論社より刊行されました。
元知事で政治・行政学者の片山善博さん(慶應義塾大学教授)、NHK報道番組キャスター、“クローズアップ現代”でおなじみの国谷裕子さん、そして司法制度改革推進本部裁判員制度・刑事検討会委員を務められた弁護士四宮啓さん(國學院大學法科大学院教授 当研究所2009年4月4日公開研究会第1回で講演いただきました)のお三方による鼎談の体裁です。

第1部 最初に知りたい10の疑問
第2部 裁判員制度を始めることで何が変わるのか
第3部 裁判員制度の実際はどうなるのか
第4部 裁判員制度と民主主義
第5部 裁判員制度のこれから

という構成で、戦後初めての裁判員裁判を目前に控えた国民の率直な疑問に、正面から答える内容となっています。
本書全体を通して改めて気づかされるのは、今回の裁判員制度の成立を、これまでの刑事裁判、さらに広くこれまでの司法のあり方全般にかかわる改革の動きから切り離して評価することはできない、ということです。「人質司法」「自白優位」「調書裁判(口頭による審理ではなく“紙”の偏重)」といった冤罪の温床ともいえるこれまでの刑事手続・刑事裁判の問題点を正し、日本国憲法に記された適正手続きの考え方や司法のあり方に近づけようとする様々な制度改革の一環として裁判員制度があるということを、いま一度想起する必要があるでしょう。

一方、これらのことが国民に十分伝わっているとは言い難い現状があることも、本書では指摘されています。裁判員制度についてのこれまでの広報が、“期間は短くて済む”“何の法律知識も要らない”など、裁判員の負担は重くないと強調するところに力点を置いていたことに対し、国谷さんは昨秋のNHK世論調査結果から、「裁判員制度に参加したくない方にその理由を聞くと、『忙しいから』という理由よりも『正しい判断に自信がない』という声が圧倒的に多」い(p.67)、と述べられています。ここに紹介された世論は、ある意味では健全な市民感覚のあらわれではないでしょうか。時間を割かれることへの不満より、人を裁くことへの不安の方が大きいというところに、裁判員制度に真面目に向き合おうとする市民の姿勢を感じます。

しかし、時間を割かれることの面倒さも、人を裁く重責の一端を担う厄介さも、「プロに任せたと思ってチェックを怠っていたら、とんでもないことに」(p.98)なる、「民主主義の社会を国民が維持する、その作業過程にも参画しなければいけないと思うのです。」(p.92)と片山さんは指摘されます。討議民主主義・熟議民主主義とは、これらの“面倒・厄介”をも自覚的に担うところからしか始まらないということでしょう。こういった「裁判制度としての側面のみならず、社会制度・政治制度としての側面」(はしがきp.A)への言及が、本書を単なる裁判員制度の説明書に終わらせず奥行きの深いものにしています。

多くの市民が裁判員制度を不安と期待の目で注視しています。しかし、自ら主体的に関わることなくしては、折角の国民の司法参加も形式的なものに堕し、冤罪防止への有力な武器ともなり得ません。そのためにも情報は必要不可欠です。連続講演会「日本国憲法と裁判官」は、裁判への市民の関心がかつてない高まりを見せている中で行なわれる企画です。あわせてご案内いたします。

【書籍情報】片山善博・国谷裕子・四宮啓著 日本評論社 2009年4月 (定価 本体価格1,300円+税)

*当サイトに搭載している憲法文献データベースでは「適正手続き」「司法権」などのキーワードで憲法文献を検索することができますので、ご案内します。

 

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