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特集『天皇制』(「週刊金曜日」2009年5月1・8日合併号所収)

H・T

 4月から5月3日の憲法記念日にかけて、「御成婚50年」にちなんで、天皇に関する特集が新聞やテレビなどで組まれました。昨年は「御在位20年」のキャンペーン記事がありました。国民主権を原理とする日本国憲法における象徴天皇の意味を深く掘り下げる企画は存在したのでしょうか。
 その中で、本特集は、国民にはあまり知られていない(知らされていない)重要な歴史的事実に迫っており、貴重です。

 「安保条約の成立」(岩波新書、1996年刊)を著した豊下楢彦氏(関西学院大学教授)は、昭和天皇が、日米安保条約の締結に当たって戦前の絶対君主のような政治的な行動を取ったことを明らかにしています。1951年9月にサンフランシスコで対日講話条約が調印されました。その直後に場所を変えて吉田茂首相だけが安保条約に署名しました。この条約の内容は事前には一切公表されず、他の5人の全権も条文を読んでいませんでした。吉田首相のみが知りました。それは、@アメリカの全土基地化と基地の自由使用権を認め、A自国に対する武力攻撃があった場合にのみ武力行使を可能とする国連憲章の枠を超えて、「極東条項」というあいまいな名目を持つ、あまりに植民地的な条約でした。そのため、吉田首相は反対し、全権を固辞します。そこで天皇は「吉田を見限り」直接アメリカ側に「吉田に任せられない」旨を伝えます。「臣茂」とまで自称していた首相は、結局天皇に従います。これが、軍事のみでなく、経済や政治など広範な領域に及ぶ対米従属の土台が作られた起源となります。戦前戦後を通じて昭和天皇は「立憲君主だった」という物語の虚構性が明らかにされています。

 纐纈厚氏(山口大学教授)も、天皇は本来は平和主義者なのに、軍部の横車によって戦争に踏み切り、開戦以降、平和の回復に腐心してきたという神話を暴いています。そして、戦後の天皇の、安保条約の締結や沖縄をアメリカの施政権下におくよう勧めたメッセージ等を踏まえ、護憲勢力も戦前・戦後の天皇の責任をキチンと追及して来なかったことを指摘しています。

 小森陽一氏(東京大学教授)は、1945年9月、マッカーサーと会談した天皇が、戦争の「責任はすべて私にある」と言明したとの「神話」が意図的に流布された経過を紹介しています。「天皇には責任はなかったのに、あえて責任を負おうとする天皇」の美談は、天皇を免責して天皇と国家、国民の戦争責任や戦後責任をうやむやにすることに成功しました。

 匿名記者による「天皇・皇室報道について考える」座談会は、現在の報道を読み解くうでで、大変参考になります。

【記事情報】「週刊金曜日」2009年5月1日・8日合併号(No.749)09年5月1日発行 定価500円


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