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書籍『裁判官はなぜ誤るのか』

T・S

 著者は24年にわたり裁判官を勤め、1991年以降は弁護士として活躍されている秋山賢三氏です。
 本書は「疑わしきは被告の利益に」という刑事手続きの原則をふまえ、誤判・冤罪を起こさせないための課題を、具体例をあげて解明しています。
 はじめに、著者自身の経験が述べられています。弁護士になって最初に気付いたことは法廷で裁判官がすわっている「壇」が「高いなあ−」と感じたことだといいます。裁判官の時は気にならなかったが高いところから人をみていると社会の常識から離れた見方をしてしまいがちになるといいます。
 本書からは、住まいへの持ち帰りが常態化している過重な仕事量、官舎・宿舎と裁判所との往復の毎日、転勤が多く市民との交流が極端に少ない生活者としての特殊環境、市民しての発言や署名など私生活での自主規制、裁判官の公私にわたるいろいろな場面を知ることができます。
 そして、青年法律家協会会員の裁判官に対するさまざまな攻撃、その象徴的なものとしての宮本康昭氏の裁判官再任拒否問題など裁判官を取り巻く社会状況が語られています。
 著者は徳島ラジオ商殺し事件では再審請求を審理する側の裁判官として、袴田再審請求事件では弁護士として冤罪事件に向き合い、袴田事件は今も続いています。

 袴田事件では強盗殺人、現住建造物等放火の罪が問われました。そこでの見込み捜査、警察情報を無批判に報じるマスコミ、逮捕・拘留され23日に及んだ身柄拘束、毎日平均12時間に及ぶ過酷な取り調べにより作成された自白調書などの経過が示されています。

  憲法38条 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
  2 強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。
  3 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。

 一審判決は、検察調書の一部は憲法31条の適正手続きを欠き、刑訴法にも違反するなど捜査の違法性を弾劾しながら、1通だけは任意性を認めて死刑判決を言い渡しました。

  第31条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

 本書は個々の裁判官が誤判をしないための心構え、十戒を提言しています。
 5月21日から裁判員制度が始まります。本書が刊行された2002年は裁判員制度の採用が決まり、内容が論議されている時でした。
 詳細な刑事手続きの規定は日本国憲法の特長の一つです。裁判員制度が導入され、刑事裁判が変わろうとしている今日、刑事裁判と裁判官をめぐる状況を理解する書としてお勧めです。

【書籍情報】 秋山賢三著 岩波新書 2002年10月刊行 定価(本体700円+税)

*裁判員制度の開始に際して、当研究所が連続講演会「日本国憲法と裁判官」を開催します。第1回目は5月22日です。こちら
*「適正手続」や「裁判を受ける権利」などに関わる文献は当サイトに搭載している「憲法文献データベース」で検索できますので、ご案内します。

 

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