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書籍『「戦地」派遣――変わる自衛隊』

K・T

「九条が、あるから入った、自衛隊」――さるところで、こんな句を知りました。自衛隊の海外活動が本来任務に格上げされ、「戦地」派遣があたかも常態化したかのごとき今、この句ももはや“笑い事”ではなくなっています。

「自衛隊のいるところが非戦闘地域だ。」「危険だから自衛隊が行くんです。」この二つの科白は、同じ人間の口から発せられました。もうひとつ。「航空自衛隊の使用する空港と飛行ルートは非戦闘地域」だが、「大変なストレス」にさらされ「結構危険」。ご承知のとおり、前者は当時の小泉首相の発言であり、後者は当時の久間防衛大臣の答弁にもとづくものです。「『戦闘地域ではない』と強調しながら、続く言葉で『戦闘地域かもしれない』と言ってのける人物を国防のトップにいただくことに自衛隊の不幸がある」(本書p.121)。“危険だけど、非戦闘地域”―このような理屈にならぬ理屈を政治の場でまかりとおらせ、私たちの政府は、自衛隊をイラクに派兵しました。憲法との整合性を、どこに見出せばよいか。
「久間発言は本人が予想もしないところで評価されることになる。」(同)「名古屋高裁は、『イラクで国際的な武力紛争が行われている』と判断、バグダッドについて『イラク特措法にいう「戦闘地域」に該当する』と断定した。」(p.122)(当サイト「今週の一言」「おおいに語ろう、自衛隊イラク派兵違憲判決(前編)」「同(後編)」をご参照下さい。)

本書著者半田滋さんは、東京新聞編集委員。9・11後、「アフガニスタン攻撃、イラク戦争へと突き進んだ米国に歩調を合わせ、日本政府が『戦地』に送り込んだ自衛隊の実情、およびそうした活動が自衛隊内部にどんな変容をもたらしているのかを取材した記録」(本書はじめに p.G)であり、また「自衛隊が米軍と一体化する米軍再編が日米で合意されたことにより、自衛隊が『対米追従カード』に変化した事実を明らかに」(同)しているのが本書です。
丹念な取材とその分析をとおして、イラク派兵に代表される自衛隊の“海外活動”即ち「“戦地”派遣」が、繰り返し表明された“人道復興支援”とは裏腹に、対米支援に終始していたことが検証されています。

では、そもそもイラク戦争とは何だったのか。本書でも述べられているとおり、米国は「イラクに大量破壊兵器が存在する」と主張して、決してイラクに対する武力行使を容認しているわけではない国連決議を、無理やりイラク戦争の根拠としました。「のちに米国は『大量破壊兵器はなかった』と修正し、戦争の大義が揺らいだ。」(p,112)
このイラク戦争を国際法上違法であるとして、これに加担することを拒否したドイツ連邦軍少佐フローリアン・パフさんのお話を伺う講演会「軍人の抗命権・抗命義務―イラク戦争への加担を拒否した連邦軍少佐に聞く」を行ないます。ドイツには、国民は軍隊内にあっても自由な人格として、責任感をもった市民(「制服を着た市民」)でありつづけるべきだという理念の下に設立されたドイツ連邦軍が存在し、またそれを前提した連邦軍部隊服務裁判所や軍人法が存在します。平和構築の方法において、軍隊を持たないことを憲法に明記した日本とは異なる道を歩んでいます。その比較は、憲法学的視点からも有意義なものになるでしょう。
また、日本とドイツの学生が“9条”について自らの考えを語る法学館憲法研究所双書「憲法9条新鮮感覚」もあわせてご案内いたします。

【書籍情報】半田滋著 岩波新書 2009年2月刊行(定価 本体780円+税)

*「自衛隊海外派遣」などに関わる文献は当サイトに搭載している「憲法文献データベース」で検索できますので、ご案内します。

 

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