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書籍『現代憲法における安全 ― 比較憲法学的研究をふまえて』

K・T

当研究所客員研究員である森英樹教授(龍谷大学法科大学院、関連情報1関連情報2関連情報3)を編著者とする書籍『現代憲法における安全―比較憲法学的研究をふまえて』が、日本評論社から刊行されました。
本書は第一部「総論:憲法・憲法学と「安全・安心」―問題状況と理論動向」で「憲法・憲法学から観察するさいの視点につき総論的な考察」(同p.C)を行い、第二部「各国憲法と「安全・安心」―比較憲法的検討」で「主要国の憲法・憲法政治・憲法学が『安全・安心』問題をどう取り扱っているか」(同)を比較憲法学的に点検・検討し、第三部「『安全・安心』の諸相と憲法学の課題」では「諸領域での『安全・安心』施策」(同)を「憲法・憲法学の視点から解析し、権利としての安全をシステムアップする現代憲法的な可能性を構成する」(同)という内容で構成されています。

本書を貫く問題意識は、近年日本における“constitutional change”、すなわち根底的改変 ― 日本国憲法の「改正」を包含した ― を志向する動機のひとつに、現代的・現在的な「危険・不安・脅威」の存在から希求される「安全・安心」があるということを正面から見据えつつ、「日本国憲法に凝縮している近現代憲法の想定する『安全・安心』をどのように把握・構想するか」(同p.C)を問うところにあります。「いかなる施策も、憲法を脇において構想されていいわけはない。」(同)“安全・安心”が大義名分として掲げられた政策に、人は容易に反駁できなくなります。それが、実は新たな“危険・不安・脅威”を呼び込む契機となるかもしれないのに。本書は、そのことを憲法的視座から検証するものです。

第一部・第一章 憲法学における「安全」と「安心」(執筆者:森英樹教授)では、このスタンスから、人の権利としての「安全(safety)」、その将来にまでわたる保障を存立目的とする政府の政策としての「安心(security)」、という近代憲法における本来的な原点に立ち返り、憲法学の広範な領域にわたる「安心・安全」問題を総論的に考察されています。
また、同じく第一部・第三章 「軍事的安全」の危険―日本型軍事法制の変容(執筆者:水島朝穂教授(早稲田大学))では、徹底した平和主義をとる日本国憲法の下「ひねくれた展開」を余儀なくされた日本の軍事法制の変遷過程を辿り、防衛庁の防衛省への「昇格」、自衛隊海外派遣の本来任務化、軍事裁判所設置の模索という現段階に至った道筋が明らかにされます。この過程の背景について「『戦争があるから軍事基地が必要なのではなく、快適な軍事基地と膨大な軍事予算(供給)を維持するため、新たな戦争(需要)をつくり出す』という『逆説』のなかにヒントがある」(p.83)という指摘は、市民の「安全」のために「軍事」があるのではないということを浮き彫りにしています。
第三部・第一〇章「人間の安全保障」と日本国憲法の「平和主義」(執筆者:浦部法穂教授(名古屋大学)当サイトでの最近の発言1、動画メッセージはこちら)は、従来「国家の安全保障」中心だった国際社会において「人間の安全保障」という考え方が認知されてきた経緯を明らかにし、日本国憲法は「前文および九条において『人間の安全保障』をその本来的な形で、歴史的にはいわば先取りして、規定している」(p.793)と、日本国憲法の平和的生存権の意義が語られます。

以上、当研究所客員研究員の執筆された論文を中心にご紹介してきました。本書全体の目次は以下のとおりです。
第1部 総論:憲法・憲法学と「安全・安心」―問題状況と理論動向
第1章 憲法学における「安全」と「安心」 森英樹教授/ 第2章 《安全》のための戦争―侵蝕する予防原則と溶解する「境界」 岡本篤尚教授/第3章 「軍事的安全」の危険―日本型軍事法制の変容 水島朝穂教授/第4章 憲法とテロ対策立法 木下智史教授/第5章 「警察国家」への衝動と現代日本の司法 大久保史郎教授/第6章 「予防原則」と憲法理論 愛敬浩二教授/第7章 Emergency constitution論の検討 大河内美紀准教授/第8章 基本権保護義務論の射程と可能性 永田秀樹教授/第9章 「市民の安全」とジェンダー―DVへの警察の介入をめぐって 中里見博准教授
第2部 各国憲法と「安全・安心」―比較憲法的検討
〔T〕イギリス連邦・アメリカ合衆国
第1章 イギリス「テロリズム」法制の現状と問題性―「邪悪な」人権侵害立
小松浩教授/第2章 イギリス労働党の「安全・安心」政策 植村勝慶教授/第3章 ニュージーランドにおける「安全・安心」 近藤真教授/第4章 アメリカにおける緊急事態法制の展開 右崎正博教授/第5章 「対テロ戦争」を戦う合衆国最高裁―グアンタナモにおける適性戦闘員の法的処遇をめぐる動向から 塚田哲之教授/
〔U〕フランス
 第1章 フランスにおける自由と安全―テロ対策を手がかりに 村田尚紀教授/
第2章フランスのテロ対策法における監視ビデオシステムと個人情報保護 清田雄治教授/第3章 Securiteの射程 丹羽徹教授/第4章 フランスの雇用政策における「安全」と「安心」 伊藤雅康教授
〔V〕ドイツ・イタリア・ラテンアメリカ
第1章 ドイツにおける「安全と自由」―安心感の維持向上への公権力の関与という視角から 植松健一准教授/第2章 イタリアのテロ対策立法について―その歴史的展開を中心に 高橋利安教授/第3章 ラテンアメリカにおける「安全」と「不信」―ペルー国家に対するある一つの米州人権裁判所判決から考える 川畑博昭准教授
第3部 「安全・安心」の諸相と憲法学の課題
 第1章 「安全・安心」の自己責任化 岡田章宏教授/第2章 いじめ概念の憲法学的検討―児童・生徒の安全再構築のために 中富公一教授/第3章 少子化対策における「安全」 彼谷環専任講師/第4章 政治的ビラ配布の自由と「安心・安全」の相剋 小沢隆一教授/第5章 政党政策としての「安全・安心」 上脇博之教授/第6章 エコロジー的安全と憲法―ドイツ語圏諸国のエコロジー評議会構想 前原清隆教授/第7章 「安全」の概念とわが国「安全確保」体制―名古屋市生活安全条例にふれて 小林武教授/第8章 改憲論における「安全」 倉持孝司教授/第9章 憲法と安全保障体制―「二つの法体系」論・再考 本秀紀教授/第10章 「人間の安全保障」と日本国憲法の「平和主義」 浦部法穂教授

【論文情報】森英樹編著『現代憲法における安全 ― 比較憲法学的研究をふまえて』日本評論社 2009年2月 (定価 本体価格9,000円+税)

*森英樹教授の書籍・論文などは当サイトに搭載している憲法文献データベースで検索できますので、ご案内します。

 

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