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書籍『有事法制がまちにやってくる ― だれをまもる国民保護計画?』

K・T

「『轢っ殺してゆけ』と、いった。」
と、作家の故司馬遼太郎さんは、「石鳥居の垢」(『歴史と視点―私の雑記帖』(新潮文庫)所収)の中で書いておられます。在学中兵隊にとられ、戦車連隊に配属された司馬さんは、満州での教育訓練の後、北関東に送られます。そこで、上陸後北上する敵を南下して迎撃する作戦について、将校から説明されたときのこと。「終わって、質問になった。(中略)素人ながらどうしても解せないことがあった。」敵が上陸すれば、東京・横浜からの避難民が大八車に家財を積んで道路を北上してくるだろう。戦車は南下する。その場合どうやって交通整理をするのか、という司馬さんの質問に対して、連隊将校は、昂然と冒頭の答を返すのです。

今回ご紹介する書籍『有事法制がまちにやってくる』の中に、およそ65年前に司馬遼太郎さんが味わった苦汁と、おそらく同じ思いをしたであろう自治体職員の話がありました。国民保護法にもとづく都道府県による住民避難の図上演習。2003年11月、鳥取県では“日本海側からの上陸攻撃の予測”に対応した、県境を越えて“岡山県方向への避難”の図上演習で、「『北上する部隊が国道のすべての車線を占有することが判明して、県の職員が愕然とした』と報じられている。」(本書p.77)

“有事法制がまちにやって”きたところで、既に上述のような事態が起きています。しかし、本書の趣旨は、有事法制の危険な実態を明らかにすると同時に、そのシステムを詳細に分析することで、有事法制に組み込まれた国民保護法の運用如何で地方自治体の自主性・自律性を発揮する余地を探るところにあります。「有事法制・国民保護法制のもとでも、地方自治体が地域住民とともに非戦・平和の道を追求し、真に住民の安全を守るべき方向を模索することは十分可能」(p.18〜19)
武力攻撃事態法第7条では地方自治体は「当該地方公共団体の住民の生命、身体及び財産の保護に関して、国の方針に基づく措置の実施その他適切な役割を担うことを基本とする。」とされています。“その他適切な役割”とは、国の方針に基づかない措置で地方自治体が独自の判断で実施するものを指しており、著者はここに着目、「『自治体間の協議やNGO活動を通じて平和的解決に寄与する』という選択」(p.30)や「『無防備地域を宣言して国や相手国にその確認や作戦軍の域内不進入を求める』という道筋」(同)も十分ありうるのだと指摘します。
平和構築に地方自治体が自律性を発揮すること、それは、第92条で地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める、としている憲法の要請するところでもあるでしょう。

3月12日、映画「シリーズ憲法と共に歩む 第一篇 戦争をしない国 日本」製作委員会・当研究所共催で講演の夕べ「『戦争をしない国』日本の“いま”」を行います。前国立市長上原公子さん(今週の一言「憲法と地方自治の本旨をかみしめて…」書籍『しなやかな闘い―生命あふれるまちづくりの試み』などご参照ください)と本書著者田中隆さんに語っていただきます。くらしに最も身近なところで、戦争と平和、憲法の意義について学びあう機会になるものと思います。あわせてご案内いたします。

【書籍情報】田中隆著 自治体研究社 2005年2月刊行 (定価 本体1,500円+税)

*有事法制に関わる書籍・文献は当サイト「憲法文献データベース」で検索できますので、ご案内します。

 

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