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対談「イラクの実態・イラク派兵違憲判決から学ぶもの」(季刊 自治と分権 2009冬号 No.34所収)

K・T

麻生内閣が、ソマリア沖に海上自衛隊派兵を強行しようとしています。何故?の疑問を禁じ得ません。“海賊”対策ならば、求められるのは、犯罪取り締まり・“警察活動”であり、ことにあたるのは“海上保安庁”のはず。そこに“自衛隊”という“実力”(その実、戦力)部隊を派遣しようというのは、名目は何でもよいから“自衛隊”海外派遣の実績をつくるのが目的、といわれても仕方がないのではないでしょうか。
その自衛隊派遣について、既に私たちは、名古屋高裁における「違憲判決」を手にしています。そこからもう一度、“学び直す”意義は決して小さくはないでしょう。

今回ご紹介するのは、昨年8月当サイト「今週の一言」「おおいに語ろう、自衛隊イラク派兵違憲判決(前編)」、「同(後編)」にご登場いただいた、自衛隊イラク派兵差止訴訟弁護団事務局長川口創弁護士と、ボランティアとしてイラク支援を続けておられる高遠菜穂子さん(関連情報1関連情報2関連情報3、高遠さんのブログはこちら)との対談です。

対談で川口弁護士は、イラク派兵差止訴訟を“9条を守る”ための裁判ではなく、イラクの子どもたちや市民を殺さないために“9条を使う”ことを目的とした裁判と位置づけ、法廷の中では徹底して“私たちが、加害者である”事実、イラク市民を殺している米兵輸送しているのは私たちの自衛隊であるという事実を積み上げることによって、裁判官が自らの役割を自覚し、画期的な“9条1項違反”の判決をかちとったことを述べておられます。
高遠菜穂子さんは、日本に軍隊はないと信じている人が圧倒的に多かったイラクに自衛隊が派遣されたことで日本のイメージが悪化したこと、米軍及びシーア派、アルカーイダ、そして地元レジスタンス勢力の三つ巴の様相を呈しているイラクの現況と、米軍が撤退した地域では、地元部族長らの組織のイニシアチブによりむしろ治安が改善されていることを強調。

お二人の発言からとりわけ印象的なものを拾ってみますと、
川口弁護士「私たち自らも、同じ殺人罪の共同正犯です。(判決は)それを厳しく断罪して、『憲法9条1項に違反する』としたわけです。単純に、『他国による武力行使と一体化した行動』と終えないで、『自らも武力の行使を行った』と書いているのは、(中略)この判決は厳しく私たちにも向けている判決ではないかと思っています。」(p.44〜45)
高遠さん「(人質に取られたときに)最初に手を上げて、『丸腰です』と言ったところで対話のチャンスを得ることができました。(中略)ずっと考えてきて、やっと『私は「憲法9条」で命拾いしたな』と思いました。」(p.50)「(イラク支援に関して)日本人として何か役割を求められていると思います。(中略)市民のレベルで、NGOのレベルでどれだけのことをやっているかというのは知られていないと思います。でも、それを知ってもらうことで殺されずにすむのであれば、これは直接的な具体的な防衛方法だと私は思いました。」(p.51)

憲法は何のためにあるのか。ときの権力者の手を縛り、勝手に人を殺したり、また人を殺すことを命じたりさせない。そのためにあるのだということを自らの問題として捉え直す必要性を、この対談は改めて気づかせてくれます。今、社会的に大きな関心を呼んでいる“派遣切り”の問題も、それが従来の“労働問題”のレベルを超えて、“生活を根こそぎ奪われる命の問題”となっているところにこそ、深刻さがあるといえましょう。9条も、25条も、為政者に一人ひとりの命に対する責任を自覚させるための大切な武器です。

【雑誌情報】季刊 自治と分権2009年冬号(No.34)大月書店(定価本体1,000円+税)


*「国際貢献」論・自衛隊海外派遣に関わる憲法関連書籍や文献は当サイト「憲法文献データベース」で検索できますので、ご案内します。

 

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