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論文「平和政策への視座転換―自衛隊の平和憲法的「解編」に向けて」(書籍『平和憲法の確保と新生』所収)

K・T

深瀬忠一名誉教授(北海道大学)・上田勝美名誉教授(龍谷大学・関連情報)・稲正樹教授(国際基督教大学)・そして当研究所客員研究員である水島朝穂教授(早稲田大学)の4名の憲法学者を編著者として、総勢17名の憲法学者・研究者の方々が執筆に携わられた書籍『平和憲法の確保と新生』が、北海道大学出版会から刊行されました。平和憲法と憲法状況に係る最新の研究成果がうかがえる、そんなタイトルの並んだ目次を眺めるだけで心の躍る書籍です。

はしがき 編者
第1部 平和的生存権の深化と展開
 第1章 世界平和と人類の生命権確立 上田勝美(龍谷大学名誉教授)
 第2章 平和的生存権と「人間の安全保障」 浦部法穂(名古屋大学教授)
 第3章 平和憲法の国際協調主義―改憲論への根本的批判のために 小林武(愛知大学教授)
 第4章 「平和のうちに生存する権利」と国際人権保障 建石真公子(法政大学教授)
第2部 恒久世界平和の理念
 第5章 協働的人間の安全保障―社会的責任の時代と国連の再生 功刀達朗(国連大学客員教授)
 第6章 世界平和システムの目標としての「戦争非合法化」 河上暁弘(広島市立大学講師)
 第7章 「武力の支配」に代わる「法の支配」 藤田久一(関西大学名誉教授)
第3部 東北アジアの信頼醸成機構の構想
 第8章 東北アジア非核地帯条約締結の課題 山内敏弘(龍谷大学教授)
 第9章 台湾海峡をはさむ法律戦―中国「反分裂国家法」の定位をめぐって 鈴木賢(北海道大学大学院法学研究科教授)
 第10章 日本の植民地支配下の抵抗の軌跡―信頼醸成のためには相手の苦悩を知る必要がある 笹川紀勝(明治大学教授)
第11章 アジアにおける人権メカニズムの試み 稲正樹(国際基督教大学教授)
第4部 核廃絶・軍縮の国際協調
 第12章 核兵器の廃絶と通常兵器の軍縮 黒澤満(大阪女学院大学教授)
 第13章 「永世中立」構想による安全保障政策 澤野義一(大阪経済法科大学教授)
 第14章 平和政策への視座転換―自衛隊の平和憲法的「解編」に向けて 水島朝穂(早稲田大学教授)
 第15章 日本国憲法第九条をアメリカ憲法に―オーバビー博士のアメリカ憲法修正運動と日本の「第九条の会」運動 太田一男(酪農学園大学名誉教授)
 第16章 グローバルな立憲主義の現段階―NGOのプロジェクト“GPPAC”を契機とする若干の考察 君島東彦(立命館大学教授)
終章 ポスト経済大国の理念としての立憲民主平和主義―まとめに代えて 深瀬忠一(北海道大学名誉教授)

“はしがき”には、「本書は、とくに21世紀に生きる若い世代に対するメッセージとして、平和憲法の確保と新生を願っている憲法研究者と国際法研究者の論文を集成したもの」であり、「各執筆者の学問的見解や意見の相違にもかかわらず、自由で独立した、核・地球時代の今日的問題の根本の核心をつく共通の問題意識を共有して書かれたもの」とあります。

今回は、この中から本書の編者も務められた水島朝穂教授の論文「平和政策への視座転換―自衛隊の平和憲法的『解編』に向けて」をご紹介します。
本論文は、水島教授が98年に執筆された論文「自衛隊の平和憲法的解編構想」(深瀬忠一・杉原泰雄・樋口陽一・浦田賢治編『恒久世界平和のために―日本国憲法からの提言』勁草書房 所収)から約10年を経た今日的視点で、この間の状況変化を踏まえ、改めて自衛隊「解編」の可能性と道筋を探るというもの。98年以後コソボ紛争、9.11、イラク戦争等を経て、事態は自衛隊の縮小に向かうどころか、その海外派遣に血道を上げる軍拡路線へと突き進んでいるかのように見えます(軍事法制や自衛隊の変容等については、論文情報1論文情報2論文情報3などご参照ください)。水島教授は、その背景に石油利権や軍産複合体の構造的問題をみながら、しかし、「 『軍事的なるもの』の『終わりの始まり』はすでに進行している」との視座を提示されています。軍拡から軍縮への逆転の潜在力とは何か。水島教授は、@軍事力の存在根拠と有効性の「揺らぎ」A「同盟」思考の行き詰まりB防衛費に対する抑制力の高まり(地球温暖化問題など環境問題への意識)の3点を挙げておられます。
そして、98年の自衛隊「解編」構想に付け加えて、今日的観点から重視すべきポイントは@9条2項を削除させないことを一致点に、自衛隊を「専守防衛水準」に戻す。A自衛隊の民主的統制、「防衛オンブズマン」制度の導入 Bドイツの「軍民転換」の教訓に学び、「軍縮」方向に舵をきる C長期的展望として、自衛隊「解編」後に憲法九条に適合的な国連協力の形態を打ち出す、ことだと指摘されています。

「憲法九条の規範ベクトルは、国の平和・安全保障施策に関して、武力によるオプションを徹底して遮断したところにその意味がある。平和の守り方とつくり方、そしてその育て方については、憲法はきわめて開かれた性格をもつ。」(p.296)
自衛隊を、常設の国際環境・災害救援隊へと「解編」するプログラムは、一国平和主義とは異なる日本国憲法前文と9条の真髄を踏まえた、示唆に富む提言です。

次回は、本書所収の浦部法穂教授の論文「平和的生存権と『人間の安全保障』」及び山内敏弘教授の論文「東北アジア非核地帯条約締結の課題」をご紹介します。

【論文情報】論文執筆者:水島朝穂/深瀬忠一・上田勝美・稲 正樹・水島朝穂編著『平和憲法の確保と新生』所収 北海道大学出版会 2008年12月 (定価 本体価格3,600円+税)


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