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特集「日本国憲法をめぐる基本問題」(『法の理論27』所収)

K・T

2008年10月に刊行された『法の理論 27』に掲載された特集「日本国憲法をめぐる基本問題」をご紹介します。本特集の所収論文は、以下のとおりです。

T 民主主義と立憲主義―日本国憲法のディレンマ―  青山治城(神田外語大学教授)
U 民主主義の「質」と憲法学―市民の直接行動の位置づけをめぐって  高作正博(関西大学教授)
V 尊厳と二四条の可能性―近代立憲主義からの出発―  岡野八代(立命館大学教授)
W 予防原則と憲法の政治学  中山竜一(大阪大学教授)

Tの論文は、08年4月の名古屋高裁イラク給油活動違憲判決及び同年6月の最高裁国籍法違憲判決を素材に、立法と司法をめぐる権力分立の問題、憲法の正統性根拠とされる「国民(主権)」をめぐる問題などを問い直すもの。「日本国憲法の正当性調達の源泉を『国民』としながら、憲法による人権保障は基本的に外国人にも及ぶと解され、人権尊重原理は国境を越える普遍性を含む」(p.20)ことが指摘され、現実の国民国家と普遍的人権概念を基本とする(カント的)“世界共和国”理念との間に「近代国家のディレンマ」が存在すると述べられています。
Uの論文は、沖縄の基地問題をめぐる市民運動を切り口に、<市民の直接行動の意義は、民主主義との関連で捉えてはじめて積極的に位置づけうる>との立場から、
「民意の形成・実存・反映のダイナミズムの中で民主主義を捉え直すことにより、民主主義の質をより向上させうる議論を提示できるのではないか」(p.43)との問題提起を行なっています。そして、本論文執筆者高作正博教授は(当サイト関連情報1関連情報2)、“民意形成”プロセスにおける市民の直接行動の果たす役割を積極的に位置づけておられます。
Vの論文は、昨今の憲法「改正」論議とジェンダー・バッシングに対して、これらの立場が近代立憲主義への無理解や否定・否認であることを検証し、ジェンダーの視点からみた現行憲法“二四条に刻み込まれた個人の尊厳”の意義は、近代立憲主義原理としての普遍的価値にとどまらず、近代立憲主義の公私二元論を超えて、個人間の関係にわたっても貫かれるべき原理として現代的な意味が付与されているところにある、と捉えられています。すなわち、「家族」間の依存・従属関係の中で生じる“権力”に対して自由でいられる権利を、国家が保障するところに「抵抗の原理として作用する」二四条の真価があるのだ、と。
Wの論文は、2005年のフランス憲法改正により環境憲章が取り込まれたことを、「歴史上はじめて、予防原則(ないしは事前警戒原則)が一国の憲法典のなかに、公式に書き込まれた」(p.78)と捉え、憲法体系のなかに予防原則が編入されることにより派生する問題群を考察するものです。テロ対策等を念頭においた「危険や脅威に対する非合理な恐怖のため市民的自由が容易に歪められ、損なわれてしまう事態」への危機感を肯定しつつも、環境等の問題領域にかかわる予防原則は、科学技術の発展とその不確実性の増大のなかから出てきたもので、「情報公開や討議とむしろ親和性を持ち」、判例、学説、実務の蓄積を通して基準がさらに明確化されれば、予防原則は「十分に運用可能かつ有効な法概念となる」という可能性が示唆されています。

いずれの論文も、具体的かつ極めて今日的な課題を切り口に、憲法の基本原則にかかわる問題提起と考察がすすめられている内容で、ここに浮上した論点から、今後議論は種々に発展するものと思われます。

当欄では今年も様々な憲法にかかわる書籍・論文の情報を発信してまいります。可能な限り幅広く現代的関心に見合ったものも、より深く憲法の理念・本質を掘り下げ問題提起に満ちた内容のものも、積極的にとりあげていきたいと思います。また、「憲法文献データベース」もいっそうの充実をめざします。あわせてご利用下さいますようご案内いたします。

【論文情報】ホセ・ヨンパルト(上智大学名誉教授)、三島淑臣(九州大学・熊本県立大学名誉教授)、竹下賢(関西大学教授)、長谷川晃(北海道大学教授)編 「法の理論27」2008年10月刊行 成文堂 (定価 本体3,800円+税)

 

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