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書籍『普通教育とは何か ― 憲法にもとづく教育を考える』

K・T

2006年12月15日に、教育基本法「改正」法案が国会で成立、同月22日に公布・施行されて丸2年が経ちました。本年最後の当欄で“教育”をとりあげます。
それも“普通教育”です。普通教育とは何か、と正面から問われたときに、恥ずかしながら本稿筆者は、これまで“普通教育”という言葉を聞き流し、教育一般とどう異なるのか、その理念について深く考えてみたことはありませんでした。
しかし、“普通教育”という言葉は、日本国憲法そのものに書き込まれているのです。
蛇足ながら、もう一度確認してみましょう。

日本国憲法第26条 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
2 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。

第1項で国民が「受ける権利」を有するのは、“教育”です。第2項で国民が保護する子女に「受けさせる義務」を負うのは“普通教育”です。何故日本国憲法はこのような規定の仕方をしたのか。その答が、本書第一部で明らかにされています。本書の構成は以下のとおりであり、第一部では、普通教育の理念とそれが日本国憲法に位置づけられたことの意義等が、第二部では、四七年教育基本法の意義が述べられています。

第一部 普通教育とは何か(武田晃二)
序文
第一章 普通教育の理念・性格
第二章 普通教育の原理
第三章 普通教育の構造
第四章 普通教育の過程と方法
第五章 普通教育は社会の変化にどのようにかかわるか
第六章 普通教育の制度
第七章 普通教育制度を誰がどのようにすすめていくべきか
むすび
第二部 四七年教育基本法を子どもの目で読む(増田孝雄)

第一部の著者武田晃二教授(岩手大学教育学部)が、繰り返し強調されるのは、“普通教育とは『人間を人間として育成する』教育理念であり、日本においてそれが『憲法の指導精神』と結びつけられている”ということ。教育一般のあり方はさまざまですが、しかし人間(子ども)を、“国民として”“職業・企業人として”等々に先んじて、まず“人間として”教育することをこそ、日本国憲法は要請しているのだということ。「人間性を媒介する個人として自立することが憲法の理想を実現することになる」(p.71)「子どもたちが、(中略)人間的理性を獲得していく過程を通して、主権や基本的人権などに関する判断力をも育成することになる、という意味なのです。」(同)
本書では常に、日本国憲法に立ち返りながら、言葉・用語の一つひとつの定義や概念を明確化しつつ議論が進められています。三〇年間にわたって“普通教育”を研究テーマとされてきた武田晃二教授ならではの著作といえましょう。それゆえに、本書は、教育学・教育論としての価値もさることながら、法律論・法学的観点からの教育問題へのアプローチという視座をも示すものとなっているのではないでしょうか。

四七年教育基本法は「改正」されました。しかし、「教育基本法『改正派』は、(中略)『改正』についても、『日本国憲法の精神に則り』と言わざるを得ませんでした。」(p.141本書“あとがき”より)。四七年教育基本法の歴史的意義を確認しつつ、本書は結ばれています。

“人間を人間として育成する”普通教育の理念は、近代市民革命・近代立憲主義の思想的背景となった啓蒙思想の中から生まれてきました。法学館憲法研究所双書書籍『世界史の中の憲法』は、その歴史的背景を検証する“憲法の誕生と成長のものがたり”です。あわせてご案内します。

【書籍情報】武田晃二・増田孝雄著 2008年10月 地歴社 (定価 本体1,400円+税)

*教育権に関わる書籍・論文を法学館憲法研究所憲法文献データベースで検索できますので、ご案内します。

 

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