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論文『今日の政治情勢の特徴と改憲策動の新局面』(「2008年憲法講座」講義録)

K・T

今回ご紹介する論文は、2008年8月に憲法会議の行った憲法講座における渡辺治教授(一橋大学・)の講演内容がもとになっています。
講演自体は福田政権末期に行われたものですが、二代続けての自民党の“政権投げ出し”とその後の展開を見ても、本論文の指摘の正しさを裏付けているように思われます。

渡辺教授は、冒頭に「改憲と構造改革が安倍政権のもとでどうして大きくつまずいたのか」「福田政権のもとで改憲と構造改革にどんな新局面が登場しているのか」と二つの設問を投げかけ、それに答える形でこの論文も構成されています。
一、小泉・安倍政権の構造改革はなぜつまずいたのか?
二、安倍政権の改憲強行路線はなぜ困難になったのか?
三、福田政権の改憲・海外派兵の新戦略
四、福田政権における構造改革の手直しと新動向
と4つの柱で組立てられ、小泉・安倍政権のつまずきを、構造改革の面から、次いで改憲路線の面から分析し、安倍政権の後を継いだ福田政権がこれら行き詰まり状況をどのように立て直そうとしたかを、同じく改憲戦略、構造改革路線それぞれの面から分析しています。そして、国民の反撃の前に身動きとれなくなった福田政権の路線の矛盾を明らかにし、この状況を国民の側から打開していく運動の展望を描出されています。

かねてより改憲と構造改革の絡み合った相互関連に、鋭い問題提起を投げかけてきた渡辺教授。今回の論文で渡辺教授は、改憲強行路線・構造改革路線のつまづきの根本には、双方の路線に対してそれぞれ国民の大きな反発があり、それが自民党に対する民主党の“変節”を招いたと分析されています。
では、その国民の反発・反撃はどのような形で表れているのでしょうか。改憲強行路線に対する9条の会の活動の広がり。構造改革路線に立ち上がった若者を中心とする反貧困ネット、首都圏青年ユニオン(関連情報)などのつながり。「貧困と改憲というこの二つの問題にかかわることが今の労働組合の大きなスローガンになるような状況」(p.30)がうまれ、さらに、後期高齢者医療制度反対の声が高まりつつあること。9条の会で中心的役割を果たす50代・60代、貧困問題にとりくむ20代・30代、そして後期高齢者医療制度反対にかかわる60代以上の人たち、という状況を踏まえて渡辺教授が「大きくいうと青壮老」ががんばっている、と指摘されているのは興味深いところです。分野はそれぞれながら、一部の年齢階層だけが今の政治情勢に反発を感じているわけではない、という点が重要に思われます。

後期高齢者医療制度問題がクローズアップされていることも、本論文の特徴のひとつでしょう。後期高齢者医療制度について、単に保険料負担が上がるというのみならず、(1)高齢者医療費の公費負担抑制(2)地方自治体に責任転嫁(3)高齢者の公的衣料尾質的低下、とその本質を詳細に分析された上で、「構造改革の危険性が凝集」されたこの制度の廃止に向けたとりくみの必要性・重要性を説かれています。渡辺教授の述べられる、後期高齢者医療制度に象徴される構造改革路線に抗するとりくみを強めることで、政府与党が改憲路線“どころではなくなってしまう”状況をつくりだし得るとの展望は、国民運動の面から9条と25条の密接不可分性を物語るものといえるのではないでしょうか。

映画「戦争をしない国 日本」は、憲法を活かすとりくみ、国民運動の歴史をも辿る内容です。DVDの発売が始まっています。あわせてご案内します。

【論文情報】執筆者:渡辺治一橋大学教授 憲法改悪阻止各界連絡会議編「月刊 憲法運動」(2008年11月号)所収 雑誌本体価格475円+税(500円)

※当欄でこれまでにご紹介した渡辺治教授の著作等は以下のとおりです。
書籍『憲法「改正」〜軍事大国化・構造改革から改憲へ』
論文「対談『戦後史・憲法・構造改革』」
対談「戦後改憲論の動向と特徴」
論文「現代改憲史と『構造改革』」
書籍『構造改革政治の時代―小泉政権論』
書籍『憲法「改正」の争点―資料で読む改憲論の歴史』
書籍『安倍政権論―新自由主義から新保守主義へ』
講義録「憲法改正―憲法という環境の現在」
書籍『貧困報道』

※渡辺治教授の書籍・論文は当サイトの憲法文献データベースでも検索できますので、ご案内します。

 

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