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書籍『国際人権入門』

K・T

1948年12月10日、エレノア・ルーズベルトらの尽力により、国連総会において世界人権宣言が採択されました。まもなく60周年のその日を迎えます。先に当欄書籍『抗う思想/平和を創る力』でもご紹介したところです。世界人権宣言がその前文に「人間の尊厳」「恐怖及び欠乏のない世界の到来」を掲げ、日本国憲法前文と共通する理念に根ざすものであることは周知のとおり。今回改めて、国際人権という考え方が歴史的にどのように発展してきたか、現在の到達点と今後の課題は何かをまとめた本書をご紹介します。
本書は、はしがきにあるとおり、“大学教養課程の国際人権論や国際人権法の入門的教科書”として想定されているものですが、平易な文章で分かり易く、国際人権という法領域の一般市民向け入門書・概説書としても恰好の書籍です。

本書の構成は、以下のとおりです。
はしがき
第1章 国際人権の意味と意義
第2章 人権保護促進のための国際的取組み
第3章 国際人権章典
第4章 人身の自由と拷問等の禁止
第5章 少数者・先住民族の人権
第6章 女性の権利
第7章 子どもの権利
第8章 難民・避難民および移民と人権
第9章 障害者・病者の権利
第10章  経済活動と国際人権
第11章  国際人道法と国際人権
第12章  平和と人権
第13章  国際人権と私たちの課題

第1章から3章まで、国際人権のバックボーンとなる理念の史的発展とその到達点並びに人権の保護促進にむけた国連を中心とするとりくみの大枠など、総論的な概説がなされており、第4章以下12章まで、国際人権の各分野についての現況と課題が示され、最終章13章で全体をまとめています。
いまや国際社会の中で公式に人権を否定する国家は皆無と言っていいでしょう。しかし人権侵害の実態が消滅したわけではありません。多様な国内事情は国際人権保障課題より優先するという考え方から脱却し、「人権の実効的な保障のためにはそれまでの国内法による保護だけでは十分ではなくなり、国際的な基準の設定と監視による人権の促進と保護が不可欠になってきたという状況の変化」(p.14)が国際社会のコンセンサスとなるには、世界人権宣言が出てから45年後、1993年ウィーン宣言を待たねばなりませんでした。ウィーン宣言は、“人権の普遍性・不可分性・相互依存性”を公式に確認したものと評価されています(p.44等参照)。一方、現在の国際問題の焦点ともいえる、いわゆる人道的介入の是非をめぐって“保護する責任”という考え方が提唱されているものの、その客観的判定を誰が行なうかといった懸念も指摘されています(p.204〜参照)。

いずれにせよ本書では、「『国際人権』とは、そのような国際法と国内法の交錯ないし協働関係のなかで機能している生きた法現象」(p.15)と捉える立場から、国際人権保障メカニズムや基準をとりあげながら、常にそれを、日本における人権実現状況と照らし合わせています。これも本書の特徴の一つといえるでしょう。拷問禁止原則の問題では鹿児島における志布志事件等、マイノリティの人権保障では在日朝鮮・韓国人やアイヌ民族の問題等がとりあげられる一方、日本の法整備状況、法制度や運用実態について一般的な解説にとどめられているところは、概説書とはいえ本稿筆者には若干物足りなく感じられました。
しかし、「たらたら飲んで、食べて、何もしない人の金(医療費)を何で私が払うんだ」という暴言を平気で口にする、人権感覚の欠如したどこかの国の首相には、是非本書を読んでまともな感覚を身につけていただきたいものです。

【書籍情報】横田洋三・富田麻理・滝澤美佐子・望月康恵・吉村祥子著 法律文化社 2008年4月 (定価 本体2,600円+税)

*国際人権に関わる書籍・論文は当Webサイトの「憲法文献データベース」でも検索できますので、ご案内します。

 

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