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書籍『世界史再入門 ― 歴史のながれと日本の位置を見直す』

K・T

歴史に関心をもつ人の理由は、さまざまです。歴史的事件、あるいは歴史上の人物に興味を覚えたから。しかし、詰まるところ今の世界のありようがどのようにして生じてきたのか、それを知ることで今後私たちをとりまく世界がどうなるのか、どうすべきかについての手がかりを得ようとするところにあるのではないでしょうか。
私たちが今手にしている憲法も、歴史的な産物です。人類の誕生と同時に、自然発生的に生じたものではありません。歴史上のある時期に、生み出された憲法という考え方が、なぜ普遍性を獲得しうるのか。
浜林正夫教授(一橋大学名誉教授、関連情報1関連情報2)が著された本書は、なぜ世界史を学ぶのか、歴史の中で普遍的な価値理念というものはありうるのか、という根本的な問いに、常に立ち返らされる一冊です。

本書の目次は以下のとおりです。
まえがき
序章  宇宙と人類史
第1章 人類の誕生
第2章 文明の成立
第3章 古代帝国の時代
第4章 封建制の時代
第5章 近代世界の成立
第6章 資本主義の時代
第7章 現代の世界
第8章 二一世紀はどういう世紀か
補 論 世界史像の再構成へむけて

本書の趣旨をより鮮明に理解するには、補論から読み進めるのも一つの方法かと思われます。そこにまず、著者浜林教授の世界史認識に関わる重要な問題提起がなされているからです。本書は、元々91年に地歴社より刊行されたものを原本として、新たに第8章(二一世紀はどういう世紀か)を加筆し本年11月に文庫として刊行されたものですが、原本が刊行された91年とは、ソ連・東欧型の社会主義が崩壊したことを受けて世界構造が大きく変転し始めた時期。“世界史認識の方法論”の考察も、そのことと無関係ではありえません。浜林教授は補論の中で、これまでの世界史像が、いずれの方法論によっても「民主主義の課題が中心に座っていたとはいいがた」(p.325)く、民主主義の課題と生産力の関係について主として「資本主義のもとでの生産力の発展が民主主義を形骸化させ阻害するという負の関係としてとらえてきたけれども、民主主義の抑圧は生産力の発展を阻害するという関係においてもとらえなければならないことがあきらかになった。」(p.325〜326)と指摘されておられます。本書は、この課題に答えるために、具体的な歴史像を展開することで世界史の再構成を試みた書、と読み解くこともできるでしょう。

この観点が基底にあるからこそ、浜林教授は、近代という時代に他地域を支配し抑圧した西ヨーロッパ諸国が、同時期に市民革命の中で “生存・自由・平等”という普遍的な価値理念をつくりあげていったということの相互関連を、「むしろ表裏一体の関係にあった」(p.272)と捉え、「なぜならこれらの理念は歴史的には封建的な身分制への批判としてかかげられたものであり、生産力の未曾有の発展もまた封建制からの解放によってかのうとなったものだったから」(p.272〜273)との観方を提示されているのではないでしょうか。
そして、これら近代の生み出した普遍的な価値理念が、その後の資本主義の発展によって修正を加えられながら、現代憲法の母胎となっていることはいうまでもありません。

当研究所秋のリレーレクチャー(第4回)「世界史の中での日本国憲法の意義」(12月6日、講師:浦部法穂教授、動画メッセージはこちらから)も、世界史の流れの中での日本国憲法の位置づけを、改め見直す機会になるものと思います。あわせてご案内いたします。

【書籍情報】浜林正夫著『世界史再入門』 講談社学術文庫 2008年11月刊行(定価本体1,050円+税)

※浜林正夫教授、浦部法穂教授の著書・論文は当サイトの「憲法文献データベース」でも検索できますので、ご案内します。
※当サイトには、「ときの話題と憲法」、「憲法by中学教科書」などの憲法と歴史・歴史認識にかかわるコンテンツがあります。ご利用ください。

 

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