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書籍『現代日本の議会政と憲法』

K・T

衆院解散・総選挙は一体いつになるのか。定額給付金をめぐって迷走する政府与党。法案審議もそこそこにして早期解散を、との思惑が見え透く野党。日々このような報道に接していれば、政治なんて所詮、党利党略がらみの駆け引きで全てが決められてしまうのだ、と虚しくなるのも無理からぬところ。しかし、そもそも、日本国憲法はこのような政治のあり方を想定したものだったでしょうか。こういった時だからこそ、表面的な時局時流に惑わされず、原理原則(そもそも)論に立ち返る必要があるのではないでしょうか。本書は、そんな期待に応える恰好の書籍です。

本書は、高見勝利教授(上智大学法科大学院 関連情報)の論文―概して90年代後半以降07年までの間に執筆されたもので、日本における議会政治を憲法的視点から検証する内容の論文―を1冊の形にまとめたもの。以下のとおり、
T 多数派型デモクラシーと合意型デモクラシー
U 参議院改革を考えるために
V 政権の政治手法と憲法問題
W より良き立法を求めて
と、大きく4つに分けられた章立ての内に、その時々の情勢にコミットした内容の論文が収められていますが、現状分析の手法を検討し、それに基づく実際の分析と評価に至る一連の流れを、TからWまで順を追って読み解くことができるように構成されています。

著者高見教授は、デモクラシーの諸形態について、理想・理念として描出されたモデルの検討及び実在モデルの国際比較検討を通して、「多数派型デモクラシー」と「合意型デモクラシー」という2つの類型を提示されます。この類型を分析ツールとして用いながら、日本国憲法の規範構造がどのような型のデモクラシーを想定しているのかを検証し、最終的に「日本国憲法の規定するデモクラシーが多数派型だけでなく、合意型にも開かれたものであること、いや、その規範構造からすれば、多数派型よりも、むしろ合意型を企図したものである」(p.289〜290)と結論づけておられます。本書ではこの観点から、首相公選(国民内閣制)か議院内閣制か・小選挙区制か比例代表制か・参議院の位置づけ(両院制を採用する意義)といった現実の実態や課題が検討されています。

例えば、比較的記憶に新しい小泉政権下の“郵政解散”をどう評価するか。そもそも“内閣提出法案を否決したのは参議院なのに、何故、衆議院が解散されるのか?”もちろん、内閣には衆院の解散権はあっても参議院を解散することはできないのだから、民意を問うて当該提案を再議決するためには総選挙しかないのだ、との説明がなされてきました。しかし、簡単に合点のいく話ではありません。高見教授は、これを@参議院で否決された法案を再び衆議院にかけることなく解散に持ち込むのは解散権の正当な行使とは到底いえない“無理”な解散A憲法上の規定から、解散すれば当該法案は一旦廃案になるのだから、法案成立に向けた内閣の意思が問われる“非理”な解散、とすっきり解き明かしておられます。ここに、最終的には数の論理で強引な国会運営も辞さない“多数派型”の帰結として、非立憲的なものに至る危険性が示唆されているように思われます。
さらに、“ねじれ”国会に関わって「(“ねじれ”を云々する以前に)総裁選挙で党内の多数派さえ固めてしまえば、それで政権を手に入れ、自らの政策の実現が可能だとする最大与党内における政権のたらい回しこそが問題で」(p.289)あり、「政党内部はもとより政党間、衆参両院の間、さらには国会と国民の間における真剣な国政論議、熾烈な政策論争の欠如が、現代日本の議会政の混迷と貧困を招いているのではなかろうか。」(同)と教授が述べておられるのは、民主政治における“合意型”の優位性を申し分なく示したものといえましょう(註)。

日々生起する問題を考察するに際し、私たちは日本国憲法という有用なモノサシを手にしていることを思い起こさせてくれる1冊として、本書をご紹介しました。この“有用なモノサシ”、日本国憲法のあゆみを映像で描く映画「戦争をしない国 日本」DVDも理解を深める一助として、あわせてご案内します。

【書籍情報】高見勝利著『現代日本の議会政と憲法』 岩波書店 2008年10月(定価 本体価格6,600円+税)

註:「ねじれ国会」に関しては、ジュリスト2008年11月15日号(No.1367)に高見勝利教授の論文「『ねじれ国会』と憲法」(特集2「ねじれ国会」の検討)が収載されています。

*高見教授の著書・論文や議会に関わる著書等は当サイトの「憲法文献データベース」で検索できますので、ご案内します。

 

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