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書籍『平和基本法―9条で政治を変える』

K・T

今、何故、“平和基本法”なんだろう。本書タイトルを目にして、本稿筆者が最初に思ったことです。日本国憲法前文と9条。これが今の日本で十分活かされていると思う人は誰もいないはずですが、しかし、前文と9条を活かす政策への転換、具体的には安全保障課題について、個別立法政策を促す道筋がつけられればそれで良いのではないか?そんなソボクな疑問を胸に、ページをめくると、そのものズバリ。本書は、

Tなぜ、いま平和基本法なのか
U平和基本法案要綱
Vここが知りたい平和基本法Q&A

と構成されていました。
まず、“いま”、の疑問から。「『小泉劇場』が幕を閉じ、『安倍・美しい国』路線と『福田・国民の目線』内閣が、二代つづけてわずか一年で破綻したあとの『自民党政治の末期症状』」(p.7)という状態にあります。「自民党政治に替わる政権樹立における政策準備をいそぐ」(p.11)必要があり、そこには「新政権がよって立つ『共通の結集軸』と『対抗構想』が用意され」(同)なければならず、国民・有権者に説得力ある“あるべき安全保障のかたち”が提示されなければならない、というわけです。なるほど。
次に、“なぜ?”の疑問。平和基本法には、どんな意義があるのか。こうあります。仮に、9条を具現化することを掲げた新政権が樹立されたとしても、日米軍事協力の問題、自衛隊の存在、国際テロの問題など、直ちに直面する問題にどう対応するのか、「『つくりかえ』には一定の時間と手続を要します。」(p.20)9条理念と相いれない現実を根底からつくりかえるための長期展望と、現存する既成事実を解消する中・短期過程の明示が重要であり、「政治と社会を『創りかえる』政策綱領」(p.21)が平和基本法なのだ、と。確かに、個別立法では、9条理念を具現化するプロセスを目に見える形で提示することは困難です。目標にどこまで近づいているのかを総合的に判断するにも、体系だった政策綱領は重要な意義をもつでしょう。これで疑問が解けました。

本書では提起された平和基本法の考え方として、二つの柱が挙げられています。第一の柱は、“憲法理念と現実に架橋する”試み、これまでに蓄積された9条に関わる「内閣の政策」や「国会決議」(非核三原則、武器輸出三原則など)を、日本の安全保障政策の基本方針として「憲法前文と9条具現のためのプログラム法」としての意義を平和基本法にもたせる、というもの。これにより時々の政府の勝手な解釈改憲・「なし崩し」と決別することができるでしょうし、これまでの平和政策をさらに推し進めるものとして国民有権者の納得を得られやすいのではないでしょうか。
第二の柱では、「時間と規模の数値目標を設定」した軍縮プログラム、と平和基本法を位置づけています。困難が予想される自衛隊改革を伴う軍縮プログラムに、数値目標を掲げるとしていることは非常に画期的、意欲的なものに思われます。

より具体的な中味は、本書で法案要綱が条文の形で示されており、またそれに対するQ&Aも付されています。自衛隊改革の問題では「国土警備隊」「平和待機隊」「災害救助隊」へと改組する方向性をとりわけ詳細に提案していること、そしてこれらの部隊に対しても、国会による厳格な統制で文民統制を徹底することを強調していることが印象的でした。シビリアン・コントロールや憲法遵守義務と、「言論統制」との区別もつかない田母神前航空幕僚長のことが念頭にあったから、かもしれませんが。

本書を「議論をはじめる場」としてうけとめてほしい、と執筆者を代表して軍事ジャーナリストの前田哲男さんは述べられています。映画「戦争をしない国 日本」DVDの発売が始まりました。日本国憲法の歩みを映像で確認することにより、憲法の平和主義への理解も深まり、平和基本法についての議論もより活性化されるでしょう。あわせてご案内いたします。

【書籍情報】フォーラム平和・人権・環境編 執筆:前田哲男(関連情報)・児玉克哉・吉岡達也(関連情報1関連情報2)・飯島滋明(関連情報) 高文研 2008年10月 (定価 本体1,000円+税)


* 憲法9条に関する書籍・論文やこの本の執筆者の憲法関連書籍・論文は当サイトに搭載している「憲法文献データベース」で検索できますので、ご案内します。

 

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