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憲法情報Now<憲法関連書籍・論文>

 

書籍『人権保障と労働法』

K・T

今回は、労働法・雇用の分野における憲法的価値の具現を考察し追究する書籍をご紹介します。本書は、著者和田肇教授(名古屋大学大学院)が97年以降08年に至るまでの間に執筆された論文の集大成ですが、全体として憲法の人権保障を規範とする労働法の新しいパラダイム構築を志向する著者の問題意識に貫かれています。
構成は以下の通りです。

はしがき
第1章 採用の自由論再考
第2章 憲法14条1項と労働契約の公序
第3章 労働法における保護と平等
第4章 雇用形態の多様化と均等処遇
第5章 労務指揮権と労働者の自己決定
第6章 解雇法理と憲法27条1項
第7章 労働法の規制緩和と憲法
第8章 憲法の人権保障と労働法の再編

概観すれば、憲法の基本権保障と労働法の関係について、解釈論として私人間適用の問題を扱った第1章・第2章、立法論として差別禁止・均等処遇の問題を扱った第3章・第4章、また第5章・第6章は、比較的近時の論点に係る私人間適用の解釈論や基本権保障の法理念に関わる立法論の問題を扱っており、第7章・8章は、憲法に規定される基本権保障を基底に据えた労働法の新しいパラダイム構築の試み、と捉えることができましょう。
本書で際立っているのは、著者和田教授のスタンスが、常に現実の雇用状況と労働実態から出発しているところにあると思われます。著者は、現実の状況を緻密に分析した上で、“憲法体系の規定を受けた労働法という立場から基本的人権基底的アプローチ”、という選択を明確にされています。労働法と経済学・社会学との組合せが、専ら市場原理主義的・新自由主義的ベクトル―具体的には雇用分野での規制緩和―をもつのを、「労働法が憲法体系に規定されている規範的価値を無視している」(p.243)と批判され、それに対置するものとして、憲法的価値を基底に据えた労働法の新しいパラダイムを主張されています。

ところで、本書の中で経済効率優先の規制緩和・弾力化に対し、「規範の体系として国際労働基準を重視する」(p.243)という議論があるが、「人権保障という面からは憲法をより重視すべきであろう」(同)という示唆に富んだ指摘があります。改めて考えてみるに、国際労働基準はとても重要な指標であり、政府・使用者にこれを守らせることは大きな意義をもちますが、その基準のみを拠り所にしてそれを支える人権保障という法理念そのものを顧みなくなれば、“法規範意識”が薄くなる弱点をも抱えてしまうのかもしれません。あえて粗雑と飛躍をおそれずにいえば、“基準”適合性のみを拠り所にしていると、取り沙汰される“正規雇用”“非正規雇用”間の“溝”を埋めるすべを失ってしまう惧れはないだろうか、その“溝”は人権保障を基盤に据えた“規範”という共通認識によってこそ埋められるのではないだろうか。そんなことを本稿筆者は考えさせられました。

“基準”と“規範”の相違を見据える。これまでそのような問いかけが弱かったのかもしれません。多彩な切り口で憲法の本質に迫るリレーレクチャー第3回(PDF)のテーマは「雇用・福祉・生活のあり方と日本国憲法」。憲法の本質に立脚点をおくことで見えてくるものがあるのではないでしょうか。あわせてご案内します。

【書籍情報】和田肇著『人権保障と労働法』 日本評論社 2008年10月(定価 本体価格4,600円+税)

*和田教授の論文を含め憲法の労働基本権に関わる書籍・論文を当サイトに搭載している「憲法文献データベース」で検索することができますのでご案内します。

 

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