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書籍『未来を創るのは君だ! − 15歳からの憲法改正論』

H・O

 自民党憲法審査会会長である衆議院議員・中山太郎氏が高校生たちに憲法「改正」の必要性を説く書です。これまでこのページには憲法とその考え方を広げる立場から様々な書籍や論文を紹介してきました(こちら)が、憲法「改正」論の問題点を検証する意味でこの書を少し分析してみたいと思います。
 この書の中心は、なぜ憲法「改正」が必要なのか、ということです。中山氏が15歳の人たちにもわかるように熱弁をふるっています。官僚の無駄遣いを監視する制度を憲法に明記しようとか、地方分権をすすめる憲法にしようとか、情報化社会の進展や科学技術の進歩に対応する憲法にしようとか、ということが書かれています。なるほどと思ってしまう読者も多いかもしれません。しかし、この書は、官僚の無駄遣いの監視や地方分権・情報化・科学技術の推進などをはかる上で、なにゆえ憲法改正が必要なのかは論証していません。全体的には、要するに、アメリカから「押し付けられた」憲法ではなく、日本人自らが、日本の伝統や文化を盛り込んだ憲法にする必要がある、軍隊の保持を憲法に明記する必要がある、と言っています。
 この書を読む上で押さえておきたいことは、そもそも憲法とは何か、憲法改正とは何か、ということだと思います。
 この書は、憲法は「国のかたち」を決めるものだとしています。その説明の中には、憲法というものが国民の人権を守るために権力者を縛るものとしてつくられている(関連情報)という、憲法の基本的な存在意義は書かれていません。この書では、憲法9条の解釈改憲がすすめられてきたことは問題だという理由でも憲法「改正」の必要性を説いています。政権政党に所属し、解釈改憲の推進の責任の一端を負う著者が、他人事のように解釈改憲の問題点を説いています。そこには憲法によって自分たちが縛られているという自覚があるのか疑問です。いずれにしてもこの書のような論調は認められないという理解を国民の中に広める、そのためには憲法は権力者を縛るものという理解を広げることが重要となるでしょう。
 この書は、憲法を変え、新しい「国のかたち」をつくる必要性を説いています。著者は自民党の新憲法草案づくりの先頭に立ちました。著者は憲法を改正するのではなく、「新憲法」の制定を目指しているのです。しかし、憲法96条に明記された「憲法改正」は現憲法の基本理念を踏襲しつつ、部分的な修正を想定するものです。憲法96条2項は憲法改正について、「この憲法と一体を成すものとして・・・公布する」となっているのです。この「憲法改正」の条文の規定を使って、自民党が「新憲法」を制定することはできないのです(関連情報)。現憲法に規定された「憲法改正」とはどういうことなのか、ということもあらためて国民の認識にしていく必要性を痛感します。
 小泉政権・安部政権の時に比べて最近は憲法「改正」の動きが目立たなくなってきています。著者はなんとか巻き返したいと考え、この著を出版されたのだと思います。憲法改正のための国民投票法が制定され、今後国会が憲法改正の発議を行う時期が到来することが予想されます。15歳にもわかるようにわかりやすく書かれた著ですので、適切な分析・批判が広がっていくことが期待されます。

【書籍情報】2008年11月4日付けでPHP研究所から刊行。著者は中山太郎氏(衆議院議員、自民党憲法審査会会長)。定価:本体950円(税別)

 

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