法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です

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書籍『憲法ってこういうものだったのか!』

K・T

“はじめに”・“まえがき”なし。“序文”の類、なし。(ついでに、“あとがき”もなし。)扉を開くと、目次に続いて、いきなり本文が始まります。なかなか型破りな体裁です。それでも、章立ては、あります。

第1章 法律というのは血も涙もないのがあたりまえ
第2章 天皇制をめぐる顕教と密教
第3章 人間が人間らしく生きる条件
第4章 それでは「国民」とは?

冒頭「私にとって日本国憲法っていうのは、まあ商売道具のようなもの」と語る寺脇研さんは、1975年から2006年まで文部官僚を勤め“ゆとり教育”の推進などに関わってこられました。退官後の今は映画評論家としてもご活躍中。そして、「私は憲法番外地の人間だった」と語るのは、政治学者の姜尚中教授(東京大学、当欄で著書書籍『愛国の作法』書籍『戦後日本は戦争をしてきた』をご紹介しています)。このお二人が、自らの生き方との関わりを交えて、憲法について語り合います。そこに、ありきたりの憲法談義ではない、真摯さがあります。話の筋は縦横無尽。体裁に負けず劣らず内容も型破りです。

寺脇「憲法は政府と公務員を縛るわけですから、ほんとにきちんと縛っておいてくれないといけないじゃないですか。例えば十五条の、『公務員は全体の奉仕者である』という、素晴らしくわかりやすい条文があるのに。」(1章p.19)同「つまり法律って血も涙もないものなんですよ。法律に血や涙があっちゃ困るんです。血や涙があるのは、大岡越前守さまがいて、大岡裁きをするわけです。でも大岡裁きはノーだ、人治主義ではないということで近代日本はやってきてるんだから。」(1章p.41)
姜「身の丈に合って、しかし自らに対する矜持を失わない、そういう生活というものがあってはじめて、人は公共の福祉ということに目覚めるんだ、という考え方があったのだと思います。だから、公共の福祉を考える、という問題と、二十五条の『健康で文化的な生活』が国民一人一人に約束されるということは、不可分なんですよね。そしてそうあってはじめて、他国の善意、他国の平和を求める意志に信頼をして、わが国の平和をも共に作っていくという、憲法前文が成り立ってくるわけです。そういう点では二十五条というのは非常に重要なポイントだと、僕はいまになってより切実にそう思うんですね。」(4章p.158)

本書のキーワードは、<立憲主義><法治主義><民主主義><公共の福祉>。日本国憲法1条、9条、12条、13条、14条、15条そして25条に、新たな角度から光が当てられます。とくに、本稿筆者が刺激的に受け止めたのは、姜教授の25条の位置づけ方です。通常、日本国憲法が第11条及至13条で規定し保障するところの基本的人権中の、社会権の柱としての25条、と説明されますが、教授は、<公共の福祉>概念を媒介に、25条こそが12条、13条、さらには憲法前文の平和主義をも成り立たせているという見方を示唆されています。日本国憲法成立に係る背景事情からのアプローチで提示されたこの発想に斬新なものを感じました。

その日本国憲法をめぐる歴史を丹念に追ったドキュメンタリー映画「戦争をしない国 日本」は、本書にもかかわりのある内容を扱ったもの。DVDの発売も11月1日より始まります。あわせてご案内します。

【書籍情報】姜尚中・寺脇研著 ユビキタ・スタジオ 2008年10月(定価本体1,700円+税)

 

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