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書籍『憲法と資本主義』

K・T

本書は、著者杉原泰雄・一橋大名誉教授(関連情報)が、史的文献と資料の詳細な分析と検証に拠って近代市民革命後の憲法体制の変遷を追いつつ、現代資本主義憲法体制の課題と展望を探求された読み応えのある1冊です。

本書目次は、以下のとおりです。
はしがき
序章  『憲法と資本主義』の概要
第一章 近代の初頭における憲法と資本主義についての三構想
第二章 近代立憲主義型資本主義憲法体制の「光」と「陰」
第三章 閃光的な「先駆者」―一八七一年のパリ・コミューン
第四章 二つの現代憲法の登場―近代資本主義憲法体制の「陰」を克服しようとする二つの試み―
第五章 「大競争の時代」とソ連=東欧型社会主義憲法体制の崩壊
第六章 「社会主義憲法体制の崩壊」と「資本主義憲法体制の存続の問題」
第七章 現代資本主義憲法的対応とその強化の必要性を論証する社会諸科学の登場
第八章 現代・現在の基本的諸課題を解決する「民主主義」の問題
終章 現在の問題状況

まず序章で本書の全体像が俯瞰できるようになっています。著者杉原教授の論旨は、(1)近代市民革命を経た近代資本主義憲法の成立過程を跡づけ、(2)そこに「光」の部分と同時に必然的に内包される「陰」の部分を抉りつつ、(3)その「陰」の克服を課題として成立した憲法体制二つの類型、現代資本主義憲法体制とソ連=東欧型社会主義憲法体制をそれぞれ検証し、(4)ソ連=東欧型社会主義憲法体制崩壊の経緯と要因を探りながら、(5)現在の資本主義憲法体制が、近代以降の「陰」、現代及び現在特有の「陰」を克服する課題を背負っていることを明らかにし、克服のための方向性を指し示す、というものです。

杉原教授は、近代市民革命後の「陰」として克服すべき課題であったのは、<性差別の禁止><社会(福祉)国家政策の積極的推進><戦争の違法化><(国民主権から)人民主権への志向>等であると指摘され、それらの克服を一応の前提として成立した現代憲法体制になお残された課題として<人民主権の徹底>を軸に、現在に至っては地球的規模での<核抑止力論><地球環境破壊><世界市場原理主義>等の問題を摘出されています。人類の英知としての憲法体制(立憲主義)は、大きな流れとして、「陰」の克服を指向する方向で展開してきたという把握は大変興味深いところです。

とりわけ著者の問題意識が顕著に表れているのは、“人民主権論”。「人民による人民のための政治」、民主主義強化への志向として、国民代表の意味が“有権者から自由委任を受けた国家意思を形成する立場”から、“有権者への公約に拘束されて国家意思を確認する立場”へと転換し、「『人民』が、事実上または憲法慣習法上、国政の基準となる国家意思の決定において主役として登場し始めている」(p.236)と論じられます。
その上で、ソ連=東欧型社会主義憲法体制崩壊後の現在を「第三の憲法史的転換期」ととらえ、「民主主義を質的に高めようとする『人民主権』を原理とする憲法」(p.458)と位置づけられる日本国憲法に固執すべき、と説く杉原教授の思考の背後には、民主主義強化という史的ベクトルへのゆるぎない確信が漲っているように思われました。
「憲法学を生活と切断された法技術学としてしまうわけにはいかない。(中略)基本的な諸課題にたえず対峙するものであり続けなければならない。」(p.455)

【書籍情報】杉原泰雄著 勁草書房 2008年8月 (定価 本体5,700円+税)

 

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