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雑誌「法の科学 2008年号(第39号)」

K・T

民主主義科学者協会法律部会の年報として刊行されている『法の科学』2008年(第39)号、本誌全体を通してのキーワードは、<理論的対抗>。新自由主義とその改革路線に対抗する戦略や理論を構築する上での法学的課題の探求が、収載論文・報告の通奏低音となっています。
最初の
<シンポジウム=社会改造をめぐる理論的対抗―新自由主義と理論的対抗>
で、土田和博教授(早稲田大学)、多田一路准教授(立命館大学)、榊原秀訓教授(南山大学法科大学院)、矢野昌浩教授(琉球大学)、高田清恵准教授(琉球大学)の5つの報告と大島和夫教授(京都府立大学)による報告へのコメントが、直接テーマの核心に触れる内容となっており、
以下、
<コロキウム=現代改憲論と「国民」・「社会」>
<ミニ・シンポジウム1=現代改憲と「ナショナル・ミニマム」>
<ミニ・シンポジウム2=被害者の手続参加と刑事裁判の変容>
<ミニ・シンポジウム3=公害・環境被害の救済と救済制度のあり方>
に収録された各論文・報告が、個別領域にかかわる題材を扱いながら、その分野における新自由主義・構造改革路線への対抗戦略が追求されています。

特徴的なのは、<理論的対抗>の基軸に、憲法とその理念が据えられていることに思われます。
“憲法問題”というとき、支配層の側からの“改憲”の最強モチーフが軍事的プレゼンスの拡大であり“改憲の本丸は9条(2項)”と言われるだけに、そこに意識が偏りがちですが、新自由主義的改革によって市民・国民の中に引き起こされた矛盾はまさに“憲法問題”であるという指摘は、以前当欄でとりあげた法律時報増刊号『改憲・改革と法』(紹介論文「改憲動向の現在」)においてもなされているところです。その意味では、憲法が対抗戦略の拠り所となるのも当然と言えるかもしれません。本誌から、憲法問題とは、改憲動向に対して“憲法を守る(防御)”問題にとどまらず、「改革」路線に歯止めをかけるべく“憲法を活かす(攻勢)”ことの可能性を探るものなのだということを、改めて学ぶことができます。

<シンポジウム=社会改造をめぐる理論的対抗―新自由主義と理論的対抗>の、総論報告にあたる土田教授の「新自由主義的構造改革に対抗する社会経済構想―国家・市場・市民社会をめぐって」では、新自由主義への対抗理論として、市民主義的福祉国家をめざす「福祉国家のバージョンアップ論」と、公共圏としての市民社会による民主的コントロールをめざす「結社協同主義」とが挙げられ、ふたつの戦略を相互補完的なものと捉えつつ、主として「結社協同主義」について分析されています。一方、上記報告に続く多田准教授の「憲法学と新自由主義(対抗理論の模索)」は、立憲主義の考え方が新自由主義への対抗理論としてどのような有効性をもつか、という吟味に始まる大変興味深い報告です。「立憲主義一般」からは直ちに対抗理論が導かれないとしても、現行日本国憲法がどのような国家像を選択したのかを忖度することによって、動態的に捉えた憲法25条を基軸に据えた「福祉国家」編成へのベクトルが導かれる、と結論づけています。
これは、<ミニ・シンポジウム1=現代改憲と「ナショナル・ミニマム」>に収録される井上英夫教授(金沢大学 今週の一言「『人権としての社会保障』確立への不断の努力を」参照)が報告「格差=不平等・貧困社会とセーフティネット=人権」において、“憲法25条をより豊かに”と述べておられるのとも響きあうところです。

憲法に潜む可能性を、汲み尽くすために有効なアプローチを問い続けること。憲法学の重要な役割です。当研究所もその一端を担うべく、多彩な切り口で憲法の本質に迫る08秋!憲法を本質的に考えるリレーレクチャーを開講しています。あわせてご案内します。

【雑誌情報】民主主義科学者協会法律部会編 「法の科学」2008年号(第39号)(2008年9月刊行)日本評論社刊 (定価 本体2,500円+税)

 

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