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書籍『壊憲 翼賛報道―04〜07年メディア検証』

K・T

“戦前のメディアは法律で言論の自由を奪われ、何も言えなかった。”よく耳にするところです。うっかり肯きそうになるこの言葉に、本書著者山田正紀氏は、痛烈な一撃を浴びせます。「しかし、言論人、報道に携わる人間が、法律で規制されたから何も言えなかったと言うこと自身、許されないことだ。何も言えなければ黙っていればいい。しかし黙っていなかった。それどころか、ものすごい戦争の煽り方をした。」(p.204)

本書は元読売新聞記者山口正紀氏が、03年末退社後フリージャーナリストとして『週刊金曜日』その他のメディアに発表された記事・論文をまとめられたもの。

第1部 現場で考えた’04〜’07報道検証
第2部 壊憲状況に抗う視点

の2部立てで構成されています。

第1部は、04年から07年までに『週刊金曜日』に連載された記事を収録したもの。小泉靖国参拝、自民党新憲法草案、安倍内閣による教育基本法「改正」国民投票法の成立など、憲法状況にかかわる深刻な問題をメディアはどのように報じてきたのか、切れ味鋭く検証されています。と同時に、目を引くのは、冤罪事件が数多く取り上げられていること。ざっと見渡しただけでも、恵庭冤罪事件・北陵クリニック事件(関連情報・熱海署不当逮捕事件・名張毒ぶどう酒事件(関連情報)・「知的障害」者の冤罪・布川事件(関連情報)・「愛知・幼児殺害」無罪判決・映画「それでもボクはやってない」(関連情報)など枚挙に暇はありません。そのほかにも光市事件、徳島高専事件などを素材に司法に関わる報道のあり方に、厳しいジャーナリストの目が注がれています。
「人権と報道・連絡会」世話人として活躍されてきた著者の姿勢と眼差しに、揺ぎないものが感じられます。

第2部には、“壊憲状況”とメディアとの関係・メディアのあり方を問う論考が収載されています。とりわけ著者の舌鋒鋭く冴えるのは、天皇に関する言及です。天皇・新聞の戦争責任、天皇制への根源的疑問、そして“9条を1条に”。「戦争の最高責任者・天皇の責任を問わない。だから新聞も戦争責任を問わないですませる。日本のメディアは敗戦後、そういう出発をした」(p.205)のみならず、“天皇の聖断によって戦争は終わった”“平和主義者天皇”という「聖断神話」の送り手としてのメディアの戦争責任を追及します。

なぜ、こういうことが起きるのか。言論弾圧の時代に一応の終止符が打たれた後に、です。それを著者は“メディアが根源的にはらむ二面性”と指摘します。批判精神に支えられた“民衆の視点”からの報道と論評をめざすジャーナリズム――そのジャーナリストの原点として、むのたけじ氏(書籍『戦争絶滅へ、人間復活へ―93歳・ジャーナリストの発言』参照)についても触れられています(p.52)――の器としてのメディアと、売れる商品を売る、“企業の論理”に組み込まれたメディアと。本稿冒頭に引用した文章の後に続くのは、「問題の原点は、新聞が戦争のたびに部数を伸ばしてきたこと」。(p.204)

本書を貫くのは、“壊憲”状況の進展と、メディアの翼賛化とがシンクロナイズしていることへの強い危機感、そしてそれに対する抵抗の姿勢です。
当研究所の08秋!憲法を本質的に考えるリレーレクチャー第2回(10月4日)は、水島朝穂教授(動画はこちら)の講演です。翼賛メディアに警鐘を鳴らすと同時に、自らも鋭い情報発信を続ける水島教授が、憲法学者の視点から、マスコミ問題をとりあげます。あわせてご案内します。

【書籍情報】山口正紀著 現代人文社 2008年8月(定価 本体1,900円+税)

 

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