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論文「戦後法学と憲法」

K・T

当研究所客員研究員森英樹教授(龍谷大学、関連情報1関連情報2関連情報3関連情報4関連情報5)の論文「戦後法学と憲法」をご紹介します。本論文は、法律時報08年9月号「本誌1000号記念企画」に収載され、戦後法学のフィールドで法律時報誌が果たしてきた役割を辿りつつ、“戦後法学”の含意そのものを検証し、「戦後」憲法との共振関係に立つ「戦後法学」の“今とこれから”を探るものです。

本論文ではまず、日本においては、いまなお“戦後”とは1945年までの戦争の後、という固有の意味が生きていることが示され、“戦後法学”とは、“戦前・戦中”の価値観からの根本的転換であり、“戦前・戦中”の法学を「いわば否定の対象として比定しつつ登場した」ものであったことが述べられています。戦前・戦中と、戦後との「国家編成原理における決定的な根底的転換」は、日本国憲法制定による「主権原理の転換」にありますが、「意識・規範・制度の全面にわたって転換しきれたわけではない」矛盾を孕んでいたことが指摘されます。
「『戦後民主化』を推進・啓発する『法学』という含意を色濃く帯びていた」“戦後法学”は、そもそもの民主化の不徹底さと、そして戦後まもなく始まる“逆コース”との対峙が不可避の課題となり、法律時報誌がその学問的営みの場を提供する役割を果たしていたことが、数々の特集、なかんずく憲法・安保・自衛隊・改憲問題にかかわる特集を例に、明らかにされています。
興味深いのは、森教授が、戦後憲法の根底的転換の理解が「とりわけ統治層においては『民主化』に大きくシフトしていた」として、当時の中学一年生用社会科教科書“あたらしい憲法のはなし”に触れておられること。ここでは全文53頁のうち「『基本的人権』に割いたのはわずかに3頁強であり、これに対して(中略)『民主主義』の章には6頁、各論中の『国会』には10頁を割」いている一方で、「『民主主義と人権』の関係にはほとんど触れられていない」。新鮮な視角です。
本論分の最後に、森教授は、「『戦後法学』の基軸であった『戦後民主化』志向そのものに、多方面からいわば『見直し』が迫られている」として、その一部の例として“民主主義か立憲主義か”という設問の立て方や“民主主義が覆い隠してきたジェンダー構造の告発”などを挙げておられます。直接的には言及されていませんが、前述の“あたらしい憲法のはなし”に見られるような、戦後まもなくの頃からの「民主化重視」の傾向が、ここにきて「民主化」志向見直しの気運へとつながる何かを内包していたのではないかとの問題意識を本稿筆者は感じました。

いずれにしても、戦前・戦中からの根底的転換は果たされたのかという問いかけがいまなお有意である日本社会の現実から、“戦後法学”は逃れ得ない状況にあり、また逆に、“戦後法学”がこの問いかけを見失えば、今という時代が、後の世から見ての“戦前”になるのではないかとも思われます。「『戦後』法学の起点にして基点たる『戦』への峻拒」が試されているというのは、そのような意味でのことではないでしょうか。

日本国憲法が戦後果たして来た役割を多彩な切り口で検証し、憲法の本質に迫る当研究所の08秋!憲法を本質的に考えるリレーレクチャーが開講しました。今回ご紹介した論文執筆者、森英樹教授は、第3回(11月15日)に講演されます。(第2回(10月4日)は当研究所客員研究員・水島朝穂教授の「時代・社会を憲法で検証する―マスコミの各種報道を素材に」)。理解を深める一助としてご案内します。

【論文情報】法律時報2008年9月号「本誌1000号記念企画」所収 日本評論社

尚、この記念企画に収載された論文は以下の通りです。
第一部 法律時報1000号に寄せて
 「巻頭言執筆の思い出」長谷川正安(名古屋大学名誉教授)
 「戦後の法学世界をともに歩んで」清水誠(東京都立大学名誉教授)
 「時代を刻み込み、時代を超える―法律時報と民主主義法学」小田中聰樹(東北大学名誉教授)
第二部 戦後法学と法律時報
 「戦後法学と法社会学」広渡清吾(東京大学教授)
 「戦後法学と憲法」森英樹(龍谷大学教授)
 「戦後民事法学の展開と法律時報」吉田克己(北海道大学教授)
 「戦後刑事法学に反省はあったか」村井敏邦(龍谷大学教授)
第三部 連載・研究会活動のあゆみ
 「民事法研究会と『法律時報』―民事判例研究の掲載」中川淳(広島大学名誉教授)
 「『民法学のあゆみ』を顧みて」奥田昌道(京都大学名誉教授)
 「『刑事法学の動き』研究会について」中山研一(京都大学名誉教授)
 「取引法研究会・法律行為研究会・民法特集など」椿寿夫(大宮法科大学院大学教授)
 「憲法学のアヴァンギャルドとして―三つの憲法研究会の軌跡と成果」辻村みよ子(東北大学教授)
 「『労働判例研究』のフィールドとしての『北大労働判例研究会』」道幸哲也(北海道大学教授)

 

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