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特集「日本国憲法の21世紀的意義を探る―世界平和への道標」

K・T

日本の科学者2008年9月号に掲載された特集「日本国憲法の21世紀的意義を探る―世界平和への道標」をご紹介します。本特集の所収論文は、以下のとおりです。

まえがき 松川康夫(海洋学)
「平和主義の先駆―憲法第9条の意義」北村実(早稲田大学名誉教授)
「日本国憲法の普遍的原理としての第9条―憲法第9条を改めて読む」浦田賢治(早稲田大学名誉教授)
「シオニズムと黙認のはざまで―パレスチナの記憶を生きるエグザイル」清末愛砂(大阪大学大学院国際公共政策研究科准教授)
「若者大衆文化への浸透を図る自衛隊―月刊誌『MAMOR』のねらい」山口響(一橋大学大学院社会学研究科博士課程)

北村論文は、パリ不戦条約以来の歴史的到達点として憲法第9条1項「戦争放棄」がすでに国際標準となりつつあるのに対し、9条2項の「戦力不保持・交戦権否認」は世界に先駆ける画期的意義を有するものであることを踏まえ、その重要性をうったえています。政府による自衛権解釈は、9条の許容する「武力行使を伴わない自衛権」を、9条の否定する「武力行使を伴う自衛権」にすり替える詐術で自衛隊の軍備増強推し進めてきたことを明らかにし、最後に自衛隊の軍事的価値を無化する展望を示唆しています。
浦田論文は、憲法学界における芦部説と深瀬説を対比させながら、9条を普遍的原理といい得るのかどうかという根本的な問いに迫ります。“普遍的原理”の意味を近代立憲主義的立場から捉える芦部説では、憲法9条の含意する平和主義を、歴史の中の特異性(先駆性でもありますが)とみるのに対し、深瀬説では、人類史的な観点で平和主義を捉え、核時代の平和的生存権こそ全世界の国民の普遍的な自然権的人権と位置づけられている、と整理されます。憲法学の通説では、日本国憲法9条とりわけその2項は、近代(欧米)社会の憲法にあまねくあてはまる根本原則とはされていません。しかし本論文は、冷戦後も深まる核の脅威や地球環境の危機的状況が、現実世界の切実な要求を生み出し、それが憲法9条の普遍的意義を再発見させていると指摘しながら、さらには「憲法原理の規範的意味を論じるさい、人類史的な次元での歴史的なものと地球次元での普遍的なものとを、いったいどのように統一にむけて関係づけるか」と課題を投げかけ、知的刺激に満ちています。
清末論文は、パレスチナ問題の経緯と現実を詳細に辿り、この問題に対する国際社会の黙認を追及しながら、日本国憲法前文と9条の立場から日本の積極的関与の必要性をうったえます。
山口論文は、自衛隊の広報活動の時代による変遷と、“非軍事的ソフトイメージ”で国民意識への浸透を図る手口を分析し、「9条の非武装理念の価値が具体的な日常生活の中でこそ試されるようになってきている」と述べられています。

本特集の随所に、今春幕張メッセで行われた9条世界会議への言及があります。9条の平和主義、とりわけ2項の戦力不保持・交戦権否認に世界的普遍性を獲得させ、“国際標準”とするための契機になったと評価されていることに、改めて世界会議の意義の大きさを実感します。

本特集で日本国憲法の意義は、まだまだ語りつくされたとはいえない、多面的なものであることに気づかされました。9月より開講した当研究所のリレーレクチャーも、多彩な切り口で憲法の本質に迫る内容です。併せてご案内します。

【論文情報】日本の科学者2008年9月号特集「日本国憲法の21世紀的意義を探る―世界平和への道標」日本科学者会議編 本の泉社

 

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