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書籍『立憲主義の政治経済学』

K・T

2008年3月刊行された本書は、早稲田大学21世紀COEプログラム「開かれた政治経済制度の構築」(21COE−GLOPE)、民主的かつ開かれた国家社会と国際社会の構築にむけた制度設計並びに政策提言を目的とした共同研究プロジェクトの研究成果をまとめた、シリーズ「新しい政治経済学の構築へ向けて」の第4巻にあたるものです。
国民主権主義を前提にした場合、過去の多数派が制定した“憲法”が、何故現在の多数派の支配を縛ることができるのか?これは、立憲主義と民主主義との緊張関係を示す議論の一例ですが、本書は、このような立憲主義に関わる根本的な問題を、政治経済の領域にもわたって多角的に取り上げています。
本書は以下のとおり構成されています。

はしがき(藪下史郎教授・早稲田大学)
序章 立憲主義の多角的理解に向けて(川岸令和教授・早稲田大学)
第T部 9.11後の立憲主義
第1章 憲法は考える?(スティーブン・ホームズ法学教授・ニューヨーク大学)
第2章 立憲主義と民主的責任:テロとの戦いに潜むさまざまな難題(ロジャーズ・スミス政治学教授・ペンシルヴァニア大学)
第3章 次のテロの攻撃の翌朝に(ブルース・アッカーマン教授・イェール大学)
第U部 立憲主義とは何か
第4章 立憲主義のゲーム理論的分析(河野勝教授・早稲田大学/広瀬健太郎氏・シカゴ大学大学院政治学研究科博士課程)
第5章 経済学における三つの立憲主義的契機(若田部昌澄教授・早稲田大学)
第6章 テロという危機の時代における「立憲主義」の擁護(阪口正二郎教授・一橋大学大学院)
第V部 立憲主義の諸相
第7章 「小さな政府」の憲法学(棟居快行教授・大阪大学大学院)
第8章 公共サービスと自由:教育をめぐる平等と選択のジレンマを手がかりに(西原博史教授・早稲田大学)
第9章 差別―ロールズ格差原理の再定式化(後藤玲子教授・立命館大学大学院)

第T部は、9・11後“テロとの戦い”を理由に、基本的人権の大幅な制限を可能にしたアメリカの状況を素材に、立憲主義の危機の分析とそれに対する“処方箋”を論ずる各論文です。いずれも、緊急事態にあっては、従前の権力抑制的枠組みとしての“消極的立憲主義”では説得力を持ちえず、権力作用のルールを定めて人権侵害を最小限にすることを提案する“積極的立憲主義”への転換が必要だとするものです。これに対して第U部第4章の阪口教授の論文は、それでもなお、人間の尊厳に依拠した消極的立憲主義の擁護を主張する立場です。
これらの論文を前にして、そもそも「政府の行為によつて」“緊急事態”が生み出されること自体を明確に禁じた日本国憲法前文と第9条とに、平和主義的価値のみならず、その立憲主義的な意義を評価する必要性を、改めて本稿筆者は感じました
書籍『立憲平和主義と有事法の展開』もご参照ください)。

第U部は、上述の阪口教授の論文の他、何故立憲主義が成立しうるのかをゲーム理論で検証する論文、第V部は、政治・社会・経済の“諸相”を立憲主義の視角で批判的に検証する論文が収められています。

本書で提示された論点が「今後の日本での憲法論議を刺激し実りあるものにする」ことを期待したい、と“はしがき”にあるように、憲法改正論議がさかんな今こそ、本質に立ち返った議論を、という問題意識が本書全体から感じられます。当研究所オンライン講座「憲法の考え方」も、憲法の基本理念から日本社会の現在と未来を見つめ直してみようとする内容です。あわせてご案内いたします。


【書籍情報】藪下史郎(監修)・川岸令和(編著) 東洋経済新報社 2008年3月 (定価 本体価格3,800円+税)

 

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