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書籍『憲法九条、あしたを変える―小田実の志を受けついで』・同『憲法九条、未来をひらく』

K・T

「九条の会」(オフィシャルサイトはこちら)の呼びかけ人の一人である小田実さんが亡くなられたのは、2007年7月30日。まもなく1年になります。最初にご紹介するブックレット『憲法九条、あしたを変える』は、本年3月、“小田実さんの志を受けついで”と題して行われた九条の会講演会の内容を収録したもの。8人の呼びかけ人と、小田実さんのよき伴侶、玄順恵さんの講演を読むことができます。

それにしても。何とさまざまな語り口でしょう。小田実さんが、どれほど多彩な活動を展開してこられたか、ひしひしと伝わってきます。政治、経済、歴史、哲学、人間社会の全てを小説は描かなくてはならないと主張した「全体小説」家、小田実。「人間チョボチョボ」を信条として、第二次大戦中の反戦活動家の存在を起点にした日本思想史を書きたいと語った小田実。ベ平連活動から阪神淡路大震災の被災者支援法制定まで、一貫して市民としての運動を貫いた小田実。
同時に。この語り口の多彩さは、小田実さんの志を受けつぐ思いを語った他の8人の呼びかけ人らもまた、実にさまざまな考え方とスタンスの持ち主であることをも物語っているようです。

例えば。『憲法九条、あしたを変える』に先立って2005年に刊行された同じ岩波ブックレットの『憲法九条、未来をひらく』 ― 2005年7月30日(その2年後に小田実さんが亡くなられたのも不思議なめぐり合わせでしょうか。)に行われた「九条の会・有明講演会」の講演録に、当日参加できなかった加藤周一さん、澤地久枝さんのメッセージと梅原猛さんのインタビュー記事原稿を加えたもの ― に目を転じてみましょう。
戦争そのものを否定できない局面はあるのではないかということから「私は絶対的平和主義者ではありません。他人が絶対的平和主義者であることを決して非難しないだろう相対的平和主義者です。」との文言があります。これに対して小田実さんは、正義の戦争はあり得ないという立場の自他共に認める「絶対的平和主義者」でした。(小田実著『戦争か、平和か―9月11日以後の世界を考える』をご参照下さい。)
また、「九条実現のため、不都合な負けを避けるために国民投票を避けようという動きがありますが、私はそれには賛成しません。」と語った方もいます。さらに、「私は戦後、日本が社会主義国になることは反対で(中略)一方で、憲法に関しては、守らなくてはならないものだという立場をとってきました。」と述べられている方もいます。九条の会呼びかけ人の中にも、実にさまざまな考え方・スタンスの違いが存在することを知るのです。

もう一度『憲法九条、あしたを変える』に戻ると、奥平康弘教授は2006年晩秋に、小田実さんから“大阪地裁の自衛隊イラク派兵違憲訴訟判決の誤りを論証してほしい”という手紙を受け取ったことを語られています。奥平教授は
「九条は、その条文によって、政府の国家権力のありようを縛っているわけです。つまり、縛られているのはあくまで国家であって、ぼくたちにとっての権利義務とは、ある程度、無関係だといえるのです。
そういう前提に立って、そこから、ぼくたちの権利が侵害されているという論理あるいは結論を引き出さなければならない。これが簡単にできるだろうか?」
という立場から、「これ(註 小田実さんからの手紙)は、たいへん困りました(笑)」と述べられるのですが、同じ講演の中で、こうも述べておられます。イラク派兵違憲訴訟原告団の中にも自衛隊合憲の立場の人がいて、九条の会の中でも「自衛隊の存在自体についての理解の仕方や憲法の解釈の仕方には、いろいろな立場がありえます。その、いろいろな立場の中で」九条改正の動きに対して「『自分は反対だ』という人たちを、その一点のみにおいて集める、ということが、実は九条の会の核心部分なのです。」と。

本稿冒頭、亡くなられた小田実さんが“呼びかけ人の一人であった”、とは述べませんでした。“「九条の会」呼びかけ人の体制は、このまま継続していくこと”が呼びかけ人会議で確認されたそうです。「小田さんはいなくなってしまったけれど、常に私たちとともにいらっしゃるのです(呼びかけ人三木睦子さん)。」

【書籍情報】
『憲法九条、あしたを変える』井上ひさし、梅原猛、大江健三郎、奥平康弘、加藤周一、澤地久枝、鶴見俊輔、三木睦子、玄順恵著 2008年7月発行 岩波ブックレットNo.731 
『憲法九条、未来をひらく』井上ひさし、梅原猛、大江健三郎、奥平康弘、小田実、加藤周一、澤地久枝、鶴見俊輔、三木睦子著 2005年11月発行 岩波ブックレットNo.664

 

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