法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です

法学館憲法研究所

Mail info@jicl.jp
 
今週の一言
憲法情報Now
 憲法をめぐる動向
 イベント情報
 憲法関連裁判情報
 シネマ・DE・憲法
 憲法関連書籍・論文
 ■今日は何の日?
憲法Voice
研究所・客員研究員紹介
中高生のための憲法教室

憲法文献データベース
日本国憲法全文
リンク集
 
事務局よりお知らせ
賛助会員案内
メールマガジン
ご意見フォーム
サイトマップ

憲法情報Now<憲法関連書籍・論文>

 

書籍『抗う思想/平和を創る力』

K・T

1948年12月。第3回国連総会において世界人権宣言が採択されました。それから今年でちょうど60年。節目の年にあたります。前回当欄でご紹介した書籍「人権入門―憲法/人権/マイノリティ」においても、国際人権保障について触れられていましたが、今回ご紹介する本書では、国際法・国際人権法がご専門の著者阿部浩己教授(神奈川大学法科大学院 ※)の論述を通して、この分野の現局面と今後の展望とを確認することができます。

本書タイトルには、世界人権宣言の誕生が、排除と統治の論理であった近代的人権を、包摂と抵抗の論理である現代的人権へと移行させる国際的契機になったという認識、そして「平和を積極的に創り出すにはどのような国際システムをどう活用すればよいのか」(p.193)という実践的問題意識を常にお持ちの阿部教授の思いとスタンスが込められています。本書は以下のとおり構成されており、

プロローグ―揺らぐ戦争違法の理念―
T 国際人権法の現在(いま)
U 変革への歩み
V 排除と連帯と
W 〈再びの一九世紀〉を超えて
X 未来を紡ぐ
Y 同時代を読む
エピローグ―周縁からの眼差し

各章ごとに著者の論文・著述が多数収められ、初出誌も法律雑誌、学会誌、図書新聞、自治体関係誌その他とバラエティに富んでいますが、わずかな例外を除けばほぼ2003年から07年までの間に書かれたもの。二〇世紀を通して獲得されたはずの“戦争の違法化”概念が、“正しい戦争は許される”へ。あらゆる人間に妥当するものとして普遍化されたはずの“人権”が、それを享受できるヒトと、それを奪ってもよいテロリストと名づけられたヒトとに差別化される。いまや“再びの一九世紀”に引き戻されようとしているのではないか、そんな危機感が本書全体を貫いています。

しかし著者の眼差しは、国連の多国間主義が踏みにじられ帝国の秩序が深まることにただ絶望するのではなく、それに対抗して“まっとうさを求める人間たち”の声と運動に注がれています。市民活動家吉川勇一氏の言葉を引用しながら阿部教授は、イラク反戦の国際的共同行動が、反戦運動の流れからというよりも、反グローバリゼーションを掲げるグループの呼びかけ、「世界社会フォーラム」の流れの「欧州社会フォーラム」の呼びかけで始まったことを明らかにしています。
世界の構造全体を変えようとする人々の動き、「経済、人権、安全保障を一つの構造ととらえる運動の流れは、ますますその深みと広がりをましていく」(p195)との指摘は、本稿筆者には、書籍「構造改革政治の時代―小泉政権論」などでご紹介した渡辺治教授(一橋大学)の“軍事大国化阻止と構造改革反対の闘い”を結びつける、という提言を想起させます。国際法学の分野、政治学の分野、それぞれの道筋から同様の結論に至るところに興味をそそられますが、ある意味では、日本国憲法の平和主義・非戦の思想そのものが想定していることであり、だとすれば、そこから導かれる当然の帰結、とさえ云えるのかもしれません。

当研究所連続講座「憲法の考え方」次回(第5回)は、「平和主義ということの考え方」がテーマです。国連憲章よりも一歩先んじて「(武)力を使わないことを謳いあげた」(本書p.198)日本国憲法の価値を改めて確認することができるものと思います。オンライン講座もあわせてご利用下さい。

【書籍情報】阿部浩己著 不磨書房 2008年4月 (定価 本体1,600円+税)

※当サイトでは、先に阿部浩己教授の書籍「戦争の克服」(共著)書籍「改憲は必要か」(共同執筆)書籍「もしも憲法9条が変えられてしまったら」(共同執筆)をご紹介しました。また、阿部教授が理事長を務められる人権NGOヒューマンライツ・ナウの事務局鈴木麻子さん(弁護士)には「今週の一言」にご登場いただいています。ヒューマンライツ・ナウのウェブサイトはこちらです。

 

[今週の一言][憲法情報Now][中高生のための憲法教室][憲法文献データベース][事務局からのお知らせ]
[トップページ]