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書籍『人権入門―憲法/人権/マイノリティ』

K・T

もしも、一度だけ生まれ変われるとしたら―という思考実験について聞いたことがあります。もちろんこれは、“生まれ変わり”という現象の存否や“生まれ変わり”を信じる・信じないという問題ではなく、あくまで思考実験です。さて、一度だけ生まれ変われるとしたら、あなたはどんな世界(社会)に生きたいと思うか。この設問の前提は、生まれ変わる先の環境や条件について、自分では一切選ぶことができない、ということです。
仮にあなたが今、日本国籍を有する男性で、身体的・精神的な障害もなく、生活も楽ではないが暮らしていける、という条件にあるとしましょう。次に生まれ変わったときにあなたは、生命の存続が危ぶまれる地域に出生し、そこから難民として日本にやってきて、不法在留者として扱われるかもしれない(本書『人権入門』p.188〜参照)。あるいは、女性割礼が当然視されている地域に女性として生まれて非衛生的な環境の下、有無を言わさず割礼を強いられるかもしれない(同p.126参照)。あるいはまた。今と同じように、日本国籍を有する男性で、身体的・精神的障害もなく生まれ変わったとしても、不運な事情が重なって路上生活を余儀なくされるかもしれない(同p.164〜参照)。ひょっとしたら、超大国のビ○・○゛イツのような立場に生まれ変わるかもしれないが、その可能性が限りなく低いことは、ビ○・○゛イツのような人間の全人口に占める割合を考えればすぐに分かることです。

このように考えてくると、生まれ変わる先の世界(社会)が、可能な限り、どんな人間でも「人間の尊厳」を失うことなく「個人として尊重される」、差別のない平等な社会であることが、最もリスクの少ない“生まれ変わり”ということになるでしょう。であるならば、今私たちの生きているこの社会が、そのような社会であるべきなのではないでしょうか。すなわち、どんな人間にも人権が保障される社会。当たり前のことを回りくどく述べましたが、この思考実験の良いところは、現に存在する人権侵害の実態を、真剣にわが身におきかえ、リアルに捉えることを可能にする点です。

人権侵害。侵害の実態が、人権の価値を浮き彫りにする。本書はそんなスタンスに貫かれています。本書は、以下のとおり3部構成になっています。
FIRST STAGE 人権とは何か
第1講 人権を護る砦―憲法
第2講 「臣民の権利」と「基本的人権」―明治憲法から日本国憲法へ
第3講 人権は無制限?
第4講 国家対個人の問題に国際社会は関係ない?―国際人権保障
SECOND STAGE 日本国憲法の人権
第5講 近代人権思想の根本原理
第6講 ドラえもんのポケット?―幸福追求権
第7講 心の自由は渡さない!!!―精神的自由権
第8講 人間らしく生きたい―生存権
第9講 知らないでいると損をする!―労働者の権利
第10講 誤って逮捕されて有罪になったらたまらない―刑事手続における人権
THIRD STAGE マイノリティの人権
第11講 女と男―セックスとジェンダーをめぐる人権
第12講 子どもは人権の主体?保護の対象?―子どもの人権
第13講 障害があっても自分らしく生きたい―障害者の人権
第14講 路上に生きる―ホームレスの人権
第15講 人権を保障されるのは日本人だけ?―外国人の人権
第16講 戦争で被った犠牲はどうなるの?―戦後補償と人権
第17講 グローバリゼーションの時代―ビジネスと人権・少数民族等の権利

FIRST STAGが人権総論、SECOND STAGEで日本国憲法の保障する人権のうち「侵害されやすく、誰もが人権侵害の被害者になりうる可能性の高いもの」(本書はしがき)をとりあげ、THIRD STAGEでマイノリティに係る人権問題を扱っています。人権一般を解説するに留まらず、「人権が、最も否定されやすい局面を知り、基本的人権がすべての人に保障される社会は何か」ということの探求に、力点をおいていることが本書の特徴といってよいでしょう。

本書著者(横藤田誠広島大学大学院教授・中坂恵美子同准教授)の記す“はしがき”によれば、本書は主として大学教養課程の“日本国憲法”あるいは“現代社会と人権”等のカリキュラムを受講する学生さんを念頭においてに著されたもの、とのことですが、学生さんに限らず、法律初学者にとって大変わかりやすく親しみ易い内容になっています。各講導入部のコラムには、テーマに関連する時宜を得た話題あり、ときにはダイアローグ形式の珍(?)問答あり。堅苦しいと敬遠されがちな“人権問題”のイメージを和らげています。
その中のひとつ。第12講子どもの人権問題のコラムに、奈良県某学校の校則が紹介されています。曰く「鹿に乗って、登下校してはならない」!!?どうやらこの校則、実在するようですよ。

【書籍情報】横藤田誠・中坂恵美子 著 法律文化社 2008年5月 (定価 本体2,100円+税)

 

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