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書籍『戦争と平和の学びかた―特攻隊からイラク戦争まで』

K・T

前回当欄で、雑誌「ロスジェネ」創刊号をとりあげ、“真の連帯を可能にする個の確立”というテーマを次回の“宿題”にしました。そして、その答のひとつを、今回ご紹介する安井俊夫教授(愛知大学(05年まで))の著された書籍『戦争と平和の学びかた―特攻隊からイラク戦争まで』に探ってみたいと思います。

本書は、安井教授が1999年から2005年までの間担当された教職科目の中でとりあげた戦争と平和の問題に関わる学生の議論を紹介・分析しながら、“平和を構想する主体を形成する道を開く”戦争学習・平和学習のあり方を追究するもの。授業でとりあげられたテーマごとに本書は以下のように構成されています。

はじめに―「戦争と平和を学ぶ」とは
第1章 9・11テロ後の世界を議論する―アフガン戦争・パレスチナ危機・イラク戦争
第2章 特攻隊員の死―そのうけとめかた  ―「尾崎豊と特攻隊」の議論
第3章 ヒロシマ・ナガサキを議論する―原爆体験への共感と共同
第4章 戦争と平和の学びかた―戦争体験への共感と共同
あとがき

授業の中で安井教授が提示する戦争と平和に関する種々の資料・素材に対し学生がレポートし、論点を明確にした上で議論する。この手順を踏んで、賛否の異論がたたかわされ、学生の意識も変化を遂げてゆきます。戦争被害者、心ならずも加害に加担させられる者、またそれを拒否する者の問題を、自分に引き寄せ自らの問題として考えさせる、という作業を通して、学生は単なる同調者、傍観者的な立場から、共同へと向かう主体が形成されていく、と著者は述べられます。そのポイントは、「なぜ」このような戦争が引き起こされたのか、原因や目的を追求する論理的な分析をもとにして、そのような事態をいかにして克服しうるのか、自らは「どうすべきか」という追究に向かう筋道にあります。本書に描かれた学生さんたちの議論の過程を追っていくと、他者の痛みに可能な限り接近することを試みる感受性と、事態が引き起こされた原因を追究する論理性(異論に対する説得力をもつこと)とが、「個の確立」に必要であることが理解されます。

さらに、特攻隊の議論は、象徴的です。特攻隊員の死をどうみるかというとき、一方に「“お国(公)”のためにあたら犬死させられた」という見方があり、その対極の如き「自らすすんで“お国(公)”に奉仕した」という見方があります。後者が小林よしのり氏の『戦争論』に代表されるような特攻隊員像といえましょう。しかし、たとえ前者の見方に立っても、「絶対的な『公』との交錯の中で、隊員がいかにして『個』を貫こうとしていたか」(p.195)を見ようとしなければ、「『個』の追究を圧倒してしまう『公』とは何者なのか」(同)との問題意識に結びつかず、自らに振りかえての課題追求に至らない、が、“個”の追求に苦悩する隊員の側に立って「つまり共感―共同が成立しているのなら」(同)“公”についての理解は、主体的で個性的なものになるはずだ、と著者は述べられます。

共感から、たんなる同情や同化ではない、問題を自らのものとして捉える共同へ向かう主体の形成こそが、真の連帯を可能にする個の確立であり、そのようにして確立された“個”であればこそ“公共”とつながり、“個”の権利を侵害しようとする“公”と切り結ぶことができるのではないかと感じます。

連続講座「憲法の考え方」の次回7/19第5回「平和主義ということの考え方」は、戦争と平和の問題を憲法理念の面から確認することができるものと思います。ご参加いただきたくご案内します。オンライン講座もあわせてご利用下さい。

【書籍情報】安井俊夫著『戦争と平和の学びかた―特攻隊からイラク戦争まで』 2008年4月 明石書店 定価(本体2,500円+税)

 

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