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憲法情報Now<憲法関連書籍・論文>

 

書籍『対論 憲法を/憲法から ラディカルに考える』

K・T

冒頭「改憲論議は退屈だ」、と、本書のコーディネーターを務められた愛敬浩二教授(名古屋大学大学院)(@)は、こう喝破されます。何故退屈なのか。改憲派は9条改正という改憲目的の核心を曖昧にせざるを得ず、改正すべき規定の具体的な検証を欠いているからです。一方、真剣に“憲法を/憲法から”、掘り下げて考えるならば、そこには立憲主義、個人と国家、民主教育、自由と福祉、等々、タームを挙げるだけでも、一筋縄ではいかぬ様々な論点が浮かび上がります。愛敬教授のいわんとするところ、改憲論議が思考停止・思考放棄状態にあるのに対し、憲法を/憲法から考えることは、知的興奮を呼び覚ます、ラディカルな営みに他ならない、ということでしょう。

そこで本書は、決して予定調和的には終わらない、ときに挑発的ですらある三つの対論を軸に編まれています。その構成は以下のとおりです。(途中の年月日は、対論の行われた日付です。)
プロローグ(愛敬浩二教授)
第T部 憲法は何のためにあるのか
基調論考 それでも「公共」としての国家を(樋口陽一教授)(A)
基調論考 立憲主義・共和主義と政治(杉田敦教授(法政大))(B)
対論 樋口陽一教授×杉田敦教授 (司会)愛敬浩二教授
(2007年6月10日)
第U部 愛国心と教育
基調論考 民主制における個人の自律性と国民意識のジレンマ(西原博史教授(早稲田大))(C) 
基調論考 「反権力という権力」とナショナリズム(北田暁大准教授(東京大学大学院))(D)
対論 西原博史教授×北田暁大准教授 (司会)愛敬浩二教授
(2007年7月28日)
第V部 自由と福祉
基調論考 自由と福祉―統合原理としてのリベラリズムの再定義 (井上達夫教授(東京大学大学院))
基調論考 自由の相互承認としての憲法(齋藤純一教授(早稲田大学政治経済学術院))
対論 井上達夫教授×齋藤純一教授 (司会)愛敬浩二教授
(2007年7月8日)
エピローグ(愛敬浩二教授)

私見ですが、三つの対論を通して“戦後民主主義”とは何であったのか、というテーマが通奏低音として流れているように感じました。例えば樋口教授が、帝国憲法時代には「立憲」を名称に使う大政党があったのに対し、「他方、戦後は、ナショナルなレベルのそれなりの政党で、『立憲』を名乗った政党は、私の知る限り、存在しません。やはり『立憲』より『民主』だったのでしょう。」(p.61)と述べられるとき、個の確立、個の尊重を置き忘れた単純なる多数決原理が、戦後日本社会と国家を席巻してきたのではないかという含意があります。そして、その感覚は、コーディネーター含め本書に登場される対論者全員が、ニュアンスの差はあれ共有しているものといってよいのではないでしょうか。
かつて強硬な改憲推進論者であった中曽根元首相は「戦後政治の総決算」を口にし、同じく安倍前首相は「戦後レジームからの脱却」と言いました。大雑把にいえば“戦後民主主義”が“悪しき個人主義”を蔓延させ、公への奉仕の心を忘れさせたという議論です。一方、本書の対論では、それとは正反対のベクトルで “戦後民主主義”を問い直す試みがなされているところが興味深い。
“戦後民主主義”は何を目指し、どこに到達し、何が欠けていたのか。今後さらなる分析・検証の進展が期待されます。

(@)当サイトの下記ページに愛敬教授の論文を紹介しています。
特集「検証『改憲実態』」
特集「改憲問題―刑事法学からのアプローチ」
特集「改憲問題の新局面」
この他、論文「リベラリズム法理論の現在」が、先に当欄でご紹介した改憲・改革と法(森教授論文)改憲・改革と法(水島教授外論文)(民主主義科学者協会法律部会編 法律時報増刊 日本評論社)に収載されています。本書のテーマにも関連した論文であり、併読されることをお薦めします。
愛敬教授は法学館憲法研究所双書『憲法の本』を推薦(PDF)してくださっています。
(A)書籍『憲法入門 四訂版』著者。樋口教授の他の論文情報をこちらに掲載しています。
(B)書籍『これが憲法だ!』書籍『改憲は必要か(憲法再生フォーラム編)』著者。
(C)西原教授には当サイト今週の一言「先行する憲法の根本改正としての教育基本法改正」にご登場いただきました。特集「施行60年目の憲法状況」外に教授の論文が収載されています。
(D)論文「特集 戦後60年―どんな転換点なのか」に北田准教授の論文が収載されています。


【書籍情報】樋口陽一・杉田敦・西原博史・北田暁大・井上達夫・齋藤純一・愛敬浩二著 法律文化社 2008年4月(定価 本体価格2,200円+税)


※尚、当サイトでは憲法関連データベースで憲法関連文献をご案内しています。著作者別、テーマ別など種々の検索が可能です。当欄でご紹介する書籍と同一テーマの文献はないか、同一著者の他の著作を知りたい、などのご要望におこたえできるものと思います。是非ご利用ください。

 

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