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論文「日米安保のtransformationと軍事法の変質」/論文「現代改憲史と『構造改革』」

K・T

前回に続き法律時報増刊『改憲・改革と法』所収の論文をご紹介します。最初にご紹介するのは、第2部「国家基本構造の『改革』と法」に収められた当研究所客員研究員・水島朝穂教授(早大)の「日米安保のtransformationと軍事法の変質」です。

この論文では、かつての“極東”から“アジア・太平洋地域”へと領域を拡大した「グローバル安保体制」が、現時点までにいかなる変貌を遂げてきたかが検証されます。冒頭“transformation”の意味が、確認されます。それは一般的には日米軍事同盟の“再編”と訳されるタームですが、実は単なる“リフォーム”ではなく、医学用語でいうところの“形質転換”、すなわちあらゆる領域にわたる総合的な転換、質的変容であることが示唆されます。
この“transformation”が登場する背景、歴史的な経緯について、水島教授は、S・ライプフリートらによる第二次大戦後の国家が“民主的法治・介入国家”と特徴づけられるという分析や、ステファン・ベッケンフェルデなどの防衛概念の劇的変化にかかわる分析などを引用し、この“介入”という要素や、軍事上の“防衛”が“保護”へとパラダイム転換したこと、に着目されています。つまり、従来の軍事同盟は「グローバルな介入同盟」へと性格を変化させ、軍事行動の目的が「国土防衛」が「国益防衛」・「(紛争国・貧困国等に対する)保護責任」へと転換されたことに伴う“transformation”だというわけです。
そして、本論文で特徴的なのは、日本における防衛庁の防衛省への昇格、自衛隊法改正による自衛隊の海外派遣の本来任務化といった軍事法制の変質を、米軍との一体化を加速させる自衛隊の装備や配置、部隊の新設などの仔細を追うことで裏付けておられることでしょう。
最後に水島教授は、海外恒久派兵法制定の動向に関連して、今後「国連や国連決議の絡ませ方が課題」になると指摘した上で、日本の安全保障方式について、“国連”を重視した砂川事件一審判決、“軍備と戦争に拠らない国際平和維持の諸活動”を説いた長沼ナイキ事件一審判決に触れていますが、次の指摘は、改めて想起すべきことに思われます。「(長沼ナイキ事件一審判決以来)三五年間、裁判所が、安全保障の方式をめぐる論点を正面から扱うことはなかったが、他方で『日米同盟』が当然に肯定されたこともなかった」。(p.104)

この第2部には、上記の水島教授の論文の外、渡辺治教授(一橋大)の論文「現代改憲史と『構造改革』」などが収載されています。
第2部冒頭に掲載された渡辺教授の論文は、新自由主義と新保守主義とがぶつかり合って、保守支配層の思惑が一見分かり辛い現代の改憲の流れと構造改革との関連を、解きほぐします。書籍「構造改革政治の時代―小泉政権論」でご紹介した、メビウスの帯のごとく絡み合って改憲志向の背後に控える軍事大国化路線と構造改革路線が、ポスト安倍政権の現在に至るまで、いかなる展開を遂げてきたのかが検証される興味深い論文です。

日本という国・社会の現在の在り様と今後の在り方全体について考えるとき、「改憲」を抜きにしては語れない時代。昨今ではそれが当たり前のように受けとめられていますが、思えばほんの少し前の時代まで、「憲法改正」が喫緊の課題として意識されることは、ほとんどなかったのではないでしょうか。この時代の推移自体を、考えてみる必要がありそうです。前回と今回にわたって当欄でとりあげた法律時報増刊『改憲・改革と法』から、そんなことも考えさせられました。
当研究所の連続講座「憲法の考え方」も、憲法の原点に立ち返り、日本社会の現在と未来を考える一助になるものと思います。オンライン講座も是非ご利用ください。

【論文情報】法律時報増刊 2008年4月『改憲・改革と法』所収 日本評論社(定価3600円 本体価格3429円)

 

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