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論文「改憲動向の現在」

K・T

民主主義科学者協会法律部会の共同研究の成果をまとめた1冊、『改憲・改革と法』が法律時報増刊号として日本評論社から刊行されました。
本書は、「序」と「解題」に続いて、
第1部 現代法の現在
第2部 国家基本構造の「改革」と法
第3部 社会基本構造の「改革」と法
第4部 国際社会と憲法
第5部 民主主義法学の課題
資料編
と構成され、資料編の資料自体を除いても総数にして49本もの論文が掲載されており、まさに「(民科法律部会が)総力をあげて取り組んだ」というにふさわしい内容を誇ります。本研究の意義を、「序」で西谷敏教授(近畿大学法科大学院)は、次のように述べられています。「国民生活にとって重要なあらゆる分野で、国家機能の後退と市場原理の浸透が図られ、社会構造の全面的な『改造』が進行してきた」という情勢認識の下、今日の「憲法問題」を幅広い視野でとらえ、「現代の国家・社会構造の全面的分析を企図する」と。

今回当欄では、本書第1部の当研究所客員研究員・森英樹教授(龍谷大学)(当サイトに寄稿していただいた最新論考はこちら)の論文「改憲動向の現在」をご紹介します。解題によれば、第1部「現代法の現在」は、「『改憲・改革』をもたらしている歴史的・国際的文脈やそこに伏在する思想・理論・意識などを法的側面から総論的に検討する。」とあります。そこに収められた本論文は、
一 改憲計画の頓挫?
二 「第三の改革」論
三 「第三の改革」としてのconstitutional change
四 「第三の改革」と近代(憲)法史
の構成で、改憲動向の現況を踏まえて、戦後の改憲“運動”と対比しながら、現在の「改憲」が「第三の改革」として打ち上げられている歴史的文脈に分析を加え、近代憲法史のひとつの到達点である日本国憲法の普遍的原理を破壊しかねない現在のグローバル化への対抗論理の探求を説くものです。
「第三の改革」とは、現在の「改憲」が、明治維新後の明治憲法制定を第一の、戦後改革による現日本国憲法制定を第二の改革としてとらえ、歴史に先立つこれら二つの改革にも比せられ(擬せられ)て語られることを指します。それは、現在の改憲動向が、“一部手直し”にとどまらず、constitutional change、すなわち“この国のかたち”そのものの根本的改変を狙っていることを意味します。であるからこそ、グローバル化の圧力に晒された今の日本社会が、明文改憲を伴わずとも、既に“改憲実態”(特集「検証『改憲実態』」法学セミナー07年10月号参照)と呼ばれるような状況にあり、「その変動が実定憲法の理念・精神・原理を根底において破壊する方向をとるとき、それは『壊憲』」(p.15)と命名されるほかはない、と森教授は述べられます。
しかし、最も重要な点は、このような“改憲・壊憲実態”の進行そのものが、改憲勢力内部のきしみも生じさせ、またグローバル化の進行によって貧困・抑圧に晒される人びとがますます増大し、グローバル化への異議申し立て勢力を形成する、という示唆に富む指摘でしょう。

安倍政権が倒れたからといって「今日の改憲動向は、一度の国政選挙や首相の交代で休止・停止・撤退するほどヤワなものではない」(p.12)。現に新憲法制定議員同盟の動向など、予断を許しません。私たちも引き続き、警戒を緩めないようにしたいものです。

次回は、本書第2部「国家基本構造の「改革」と法」に収められた当研究所客員研究員水島朝穂教授(早稲田大学)の論文を中心にご紹介します。

【論文情報】法律時報増刊 2008年4月『改憲・改革と法』所収 日本評論社(定価3600円 本体価格3429円)

 

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