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書籍『9条を輸出せよ!―非軍事・平和構築の時代へ』

K・T

9条を輸出せよ!―9条の意義を、“世界の中心で叫ぶ”ことが必要なのだ、と著者吉岡達也さんは語ります。本書で“9条メカニズム”について様々な側面から言及されています。“9条”という“安全保障の最強ツール”で何ができるか、また世界の人々は“9条”に何を見、何を期待しているか。

吉岡さんは国際交流NGOピースボートの共同代表(当サイト「今週の一言」で「ピースボートで世界の人々と交流する」と語っていただきました)。当欄の書籍『NGO発「市民社会力」』でご紹介した紛争予防に関するNGOの国際ネットワーク・GPPAC、この東北アジア地域代表であり国際運営委員を務めておられます。GPPACプロセスのなかで「世界同時九条意見広告」などのアクションやキャンペーン、総称「グローバル9条キャンペーン」がとりくまれ、その動きの中から構想されたのが、まもなく開幕する「9条世界会議」です。
まず本書の構成をご紹介しておきましょう。

はじめに
第1章 いま、NGOだからできること
第2章 「丸腰」の安全保障
第3章 軍隊とカネの深い関係
第4章 9条をめぐる対話
第5章 市民による平和構築の道
あとがき

たとえば、第2章で、こんなエピソードが紹介されています。「核戦争防止国際医師会議のケニア代表は、『(非武装化するとすれば)まず、ソマリアが一番いいだろう』と言った。一瞬冗談かと思ったが、彼は大まじめだった。」(p.97)ソマリアといえば、誰もがひどい内戦状態を思い浮かべるでしょう。しかし、ケニア代表が“ソマリア”を挙げたのにはれっきとした理由があります。「民族的に人口のほとんどがソマリア人で、言語もソマリア語だけ。さらに宗教的にもイスラム教徒が大多数」で、「対外的な戦争をしているわけではない」から、国境警備以外の武力は本来必要ないにもかかわらず、大国から大量の武器が導入され抗争がエスカレートしている国。そのような国家が9条のような憲法を持って国内を非武装化し、国際社会が協調してそれを進めれば、ソマリア市民にとってこれほどありがたいものはないのではないか。
ではアジアの人々は9条をどう見ているのか。第4章で、フィリピンの紛争解決NGO代表の言葉が紹介されます。「日本には自衛隊がある。(中略)しかし、そのことに対して、近隣諸国で、誰か反対運動をしているだろうか?靖国の問題では反対デモがあったりしたが、自衛隊廃止要求のデモを聞いたことがあるだろうか?」(p.123)その真意は、日本が過去に行った侵略戦争の記憶は今なお消えていないが、日本が平和国家に生まれ変わった、戦争の歯止めとなっているのが9条だと理解している。だから、今は自衛隊に反対することを控えているが、日本が9条をなくしたいとなった瞬間、“日本はまたやる気かもしれない”という疑いがアジア諸国民の心に芽生えるのだ、というところにあります。9条が、アジア地域において、具体的に紛争予防のメカニズムになり得ていることの強力な証言です。

「ヨーロッパが『欧州の連合』という方向で『戦争予防システム』の確立、ひいては世界平和をめざしたのに対して、日本は九条という形でアジアの平和、そして世界平和の実現へと踏み出した。言い換えれば、九条はEUの成立に匹敵する人類史的価値を有している。」(p.115)そのことを、もっと世界へアピールしたい。「それが私の言う『九条の輸出』である。」(同)
9条を輸出する―冒頭に述べた「9条世界会議」が、その決定的なチャンスの一つであることは、論を俟たないでしょう。本稿筆者も、会議の成功を願ってやまぬ一人です。日本が9条の“輸出大国”になって困るのは、戦争や紛争でカネ儲けをしている人たちだけでしょうから。

【書籍情報】吉岡達也(ピースボート共同代表)著 大月書店 2008年4月 (定価 本体1,500円+税)

 

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