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特集「憲法 人権論入門」

K・T

新年度・新学期を迎え、これから法学の分野への第一歩を踏み出そうという方、またこの期に改めて学んできたことを確かめようという方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回は法学セミナー2008年5月号に掲載された特集「憲法 人権論入門」をご紹介します。本特集の所収論文は、以下のとおりです。

T「憲法学と人権―本特集によせて」(南野森九州大学准教授)
U「人権保障制約原理―公共の福祉論、超法規的制約事由 人権の制約はどこまで許されるか」(曽我部真裕京都大学准教授)
V「人権保障の実質化―二重の基準論 どうすれば人権保障を確実にできるのか」(中林暁生東北大学准教授)
W「人権保障と市民社会―私人間効力 人権を尊重する社会をいかに築くか」(青井未帆信州大学准教授)
X「人権侵害の解決方法―明白かつ現在の危険 裁判所はどのような違憲審査基準を用いるべきか」(淺野博宣神戸大学教授)

南野准教授の冒頭論文をいわば「人権論総論の総論」として、本特集は、以下四つの論文がそれぞれ「公共の福祉」「二重の基準論」「私人間効力」「違憲審査基準」といった「人権総論」の主要な論点を扱うという構成になっています。

T「憲法学と人権―本特集によせて」では、憲法に謳われた基本的人権が、日本社会において保障されていない事態が存在することに対し、憲法学と憲法学者は如何に答えるべきかを検討する、という本特集全体の目的を提示し、自然権・社会契約・(天賦の)人権という各概念の史的背景を確認しながら“交通整理”がなされ、
U「人権保障制約原理―公共の福祉論、超法規的制約事由 人権の制約はどこまで許されるか」では、人権の制約原理がいずれの学説においても、人権全般ではなく主として自由権の制約原理を念頭においていること、さらに、自由権の中でも経済的自由権とその他の自由権とを区別し、両者の制約原理は異なるものとされていること、という指摘がなされます。
この点を踏まえて、V「人権保障の実質化―二重の基準論 どうすれば人権保障を確実にできるのか」で、精神的自由に対する規制はより厳しい基準で、経済的自由に対する規制はそれよりも緩やかな基準で合憲性を審査する、という二重の基準論の論拠が立法プロセスとのかかわりで説明されています。表現の自由に代表される精神的自由が十全に保障されてこそ、民主政のプロセスの下では、議会を通じてそれ以外の自由権への規制も是正され得る、という論理は、時の“多数者”を絶対視せず“少数者が多数者になる”ことを想定する立憲主義の基本といえましょう。
続くW「人権保障と市民社会―私人間効力 人権を尊重する社会をいかに築くか」では、憲法の私人間効力について従来の議論・学説を紹介した後、最新の議論状況の要点を解説しています。その上で論文末尾では、人権侵害に対する法的救済の限界と、一人ひとりの「人権感覚」の必要性という重要な問題提起を行っています。X「人権侵害の解決方法―明白かつ現在の危険 裁判所はどのような違憲審査基準を用いるべきか」は、表現の自由に関し法律の適用の合憲性を審査する際の「明白かつ現在の危険」という基準について、憲法学の蓄積を検証する論文です。文中、「『明白かつ現在の危険』がないのに表現を制約するものは、利益の計算を間違えているのではない。勇気がないのである。」という論述は、興味をそそられます。

本号には、上記特集のほかにも「人権」問題に関わって「現代の人権―若年ワーキング・プアの実態」(河添誠首都圏青年ユニオン書記長 当サイト「今週の一言」で「若者の中の貧困の実態に目をむけ解決をめざす」と語っていただきました。)、「憲法・解釈論の応用と展開(1) 人権・基本的な考え方(2)自由と法律」(宍戸常寿)などの記事や論文が掲載されており読み応えのある内容です。
当研究所の連続講座「憲法の考え方」も、第2回は人権がテーマです。またオンライン配信も始まりましたので、あわせてご利用ください。

【論文情報】法学セミナー2008年5月号(日本評論社)所収

 

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