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書籍『自衛隊の国際貢献は憲法九条で―国連平和維持軍を統括した男の結論』

K・T

切迫した紛争最前線の現場での活動に裏打ちされた、徹底したリアリズム。著者伊勢ア賢治教授(東京外国語大学)は、本書サブタイトルどおり“国連平和維持軍を統括した”、その人です。PKO活動の最前線に立ち、“護憲的改憲論”の立場を自認してきた著者が、本書冒頭、二〇〇四年末に出版された自著『武装解除 紛争屋が見た世界』(講談社現代新書)を引用してこう述べています。
「現在の日本国憲法の前文と第九条は、一句一文たりとも変えてはならない」

著者は、何故このように考えるに至ったか。
「僕の持っている武器というのは、現場での体験しかない。その現場で、僕が実際に体験し、納得したことがある。
それが、九条を生かして日本が外交をできる、ということだった。」(p.18)

既にご存知の方も多いでしょうが、まず本書に記された著者の略歴を追ってみましょう。伊勢ア教授は、インド・ボンベイ大学大学院留学中、スラム街の住民運動に関わり、その後国際NGOの一員としてアフリカへ。2000年3月より、国連東チモール暫定行政機構上級民政官として、反政府勢力による攻撃の危険性が高い国境近くのコバリマ県知事を務めます。2001年6月から国連シエラレオネ派遣団の武装解除部長として、武装勢力のDDR(武装解除・動員解除・社会復帰)にとりくみます。2003年2月、日本政府特別顧問としてアフガニスタンへ。武装解除担当として再び武装解除に挑みます。

東チモール、シエラレオネ、そしてアフガニスタン。硝煙の消えやらぬ地域で戦闘員・武装勢力・武装組織(軍閥)を前に、著者自身は全く武器を持たず非武装で対峙するのです。しかし。戦闘継続地域に向かうときには国連平和維持軍に武装エスコートさせ、説得作業中の現場周辺には同軍を駐留させる。こうして「中立な武力による軍事的信頼醸成」によって武装解除が達成されると著者は述べています。
「もちろん、武力は絶対に平和を生まない。武力は補完的で緊急的な役割しか果たせないし、武力によって平和が達成できるわけがない。(中略)
でも、やはりそれは必要悪なのである。」(p.95)

武力による紛争解決が必要となる場面を根絶することにこそ、力を傾注すべきでないかという考え方に立てば、著者の立場に批判的な意見もあるでしょう。しかしより重要なのは、こうしたスタンスの著者が、次のように述べておられることではないでしょうか。日本がアフガニスタンで武装解除を進め、“アメリカができなかった”国防省改革までなし得たのは、現地の人々に日本に対する
「美しい誤解」
があったからなのだ、と。
「美しい誤解」の源は、いうまでもなく日本国憲法九条であり、「もちろん、アフガニスタン人の軍閥が憲法九条のことなんて知るはずもない。しかし、憲法九条のつくりだした戦後日本の体臭というものがある。(中略)これは、日本が国際紛争に関与し、外交的にそれを解決する上で、他国には持ち得ない財産だといえる。」(p.67)憲法九条を使った国際貢献、本書では、他国にはできなくとも日本ならなし得る数々の“九条利用法”についても言及されています。これは、「国際貢献のための改憲」論者に対する恰好のオータナティヴではないでしょうか。

著者が今危機感を強めておられるのは、自衛隊の給油活動継続をめぐって日本が“目立って”しまったから。国際社会の注目を浴び、アフガニスタンの人々の「美しい誤解」を自ら壊すようなふるまいによって、「日本の政府が彼ら(日本のNGO)の命を危険にさらしている。」(p.133)この言葉の意味を、私たちは噛みしめる必要があるでしょう。

自衛隊の実態はともかくも“軍隊を持たない国”として戦後六〇余年を歩んできた日本という国。この国のありようを今一度見つめなおすためにも、ドキュメンタリー映画「戦争をしない国 日本」(マンスリー上映会はこちら)をご案内します。

【書籍情報】伊勢崎賢治著 かもがわ出版 2008年3月 (定価本体1400円+税)

 

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