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書籍『NGO発、「市民社会力」―新しい世界モデルへ』

K・T

「私たちの日本は、『公・私』二元論で近代国家(明治)を造ってきました。」(p.4)「日本の真の構造改革には『公・私』二元論から、『公・公共・私』の三元論への移行が必要」(p.382)であり、公共圏で活動する「市民社会セクターが、政府セクター、企業セクターと協働していくことによって創り上げられる新しい公共圏の形成を構想して」(p.5)本書は書かれた、とあります。これが著者長坂寿久教授の問題意識であり、同時に今後の展望・課題としての問題提起でもあります。

前回当欄で述べたとおり、今回は公共哲学を理論的支柱として発展してきたNGO(NPO)の具体的な活動を通してNGOの果たしてきた役割と機能を検証し、憲法とのかかわりを論じた本書をとりあげます。本書著者長坂寿久拓殖大学国際開発研究所教授は、NGO・NPO論がご専門であり、とりわけグローバリゼーションとNGOの関係、NGO・政府・企業の3セクターの関係などを研究分野とされている方です。

政府でも企業でもない、市民社会団体としてのNGOが、現実の世界を動かすアクターとして認知されるようになったのは、ここ最近、とりわけ冷戦終結を経た90年代以降のように思われます。それはグローバリゼーションの流れが顕著になった時期とも重なるでしょう。単独国家では解決し得ぬ問題の存在について、認識を共有する市民社会団体、その国際ネットワークとしてのNGOの活動が、政府セクターや企業セクターとの協働によって現実を変える力(すなわち“市民社会力”)となっていった経緯の詳細を本書から学ぶことは、大いに力づけられます。
NGOと政府の国際的協働による先駆例として、本書では(1)気候変動ネットワーク(CAN)(2)対人地雷禁止国際キャンペーン(ICBL)(3)国際刑事裁判所を求めるNGO連合(CICC)(4)JUBILEE2000キャンペーン(債務国の債務帳消し)(5)必須医薬品入手のためのWTO規約の改正キャンペーン、などが紹介されています。いずれも、人間が人間らしく平和のうちに生きる権利の実現、「人間の安全保障」のために欠くことのできない取り組みです。

「日本国憲法九条を今日的視点で読み直すと、それが『平和的生存権』を明示し、紛争の構造的原因に焦点を当て、『構造的暴力』への取り組みを宣言したものであることが分かる。半世紀以上前に、すでに『人間の安全保障』追求を宣言した条文が生まれていたことに、新鮮な驚きと喜びを感じる。」(p.316)と著者は述べられ、続けて9条を世界に発信するGPPACの活動を紹介しておられます。「二〇〇一年、国連のコフィ・アナン事務総長が報告書の中で『紛争予防における市民社会の役割が大切』だと述べ、紛争予防に関するNGO国際会議の開催を呼びかけた。これに応えて発足したプロジェクトがGPPACである。」(p.319)国連との共同プロジェクトとして進められているGPPACに期待を寄せながら、著者はあわせてGPPACジャパンが行なっているグローバル九条キャンペーンと、今年5月に開催される「九条を支持する世界の声を集め、九条を世界へとひろげる9条世界会議」」(p.318)に言及されています。9条世界会議は、“世界を動かす市民社会力”が、まさに私たちの目の前で展開される場となるでしょう。(当サイトのNGO関連記事書籍『国際立憲主義の時代』、論文『世界平和と国際協力NGO』
(法学館憲法研究所編『日本国憲法の多角的検証』)今週の一言「NGOと国際貢献」などもご参照下さい。)

憲法学も時代と運動の発展とともに進化してきました。新しい時代状況を踏まえた憲法理念の到達点を学ぶために、連続講座「憲法の考え方」をご案内します。同講座のオンライン配信も始まりした。あわせてご利用下さい。

【書籍情報】長坂寿久著 明石書店 2007年10月(定価 本体2,800円+税)

 

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