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書籍『日本から発信する平和学』

K・T

 平和学、という学問領域があります。
 「日本において、平和学といった学問領域が、いつ頃からどのようにはじまったかを特定することは、(中略)難しい」(p.3)が、二つの世界大戦を経て、再び戦争の惨禍を繰り返すまいという人類の思いにもとづいていることは間違いないようです。
ちなみに、日本平和学会が創立されたのは、1973年。国際的には、「1967年、J・ガルトゥングは、『暴力』を幅広く定義し、『人間の潜在的な身体的・精神的な能力を、その可能性以下に抑圧するような影響力が作用しているとき、暴力が存在する』と定義した。」(p.5)この構造的暴力という概念によって「単に戦争だけでなく、飢餓・貧困・差別・人権抑圧・環境破壊といった、ありとあらゆる自己実現を阻害する要因が『平和』の問題と結びつけられることになった。」(p.2)いまや、平和学の課題は、人間の本来もっている可能性を阻害する要因全てにかかわるものとなってきました。

本書は、冷戦期、冷戦後、そしてテロの時代へと、時代の変遷に伴って平和学と平和運動がどのように変化発展してきたかを検証し、また平和創造に向かう主体をいかに形成してゆくか、といった課題に迫るものです。
何より本書の特徴をなすのは、「日本から発信する、あるいは日本オリジナルの『平和学』はないのかと考え、日本オリジナルな『平和学』のありようを示唆するテキストを編集してみよう」(p.247)と意図されていること。日本オリジナル、といえば、日本における平和学は、日本国憲法を基軸の一つとして発展してきたということではないでしょうか。前文と9条において、平和的生存権や戦争放棄と戦力不保持を明記する日本国憲法。
国際的には、平和学は一般的に哲学や歴史、社会学、運動史的な側面からアプローチされ、一国の法そのものを平和思想の拠り所とするものは少ないように思われます。また、先述のとおり平和学の対象領域もかつてなく幅広いものとなっています。これに対して、どの側面から課題をとりあげるにせよ、憲法を抜きにしては平和学を語れないという事実そのものが、日本の特異性、「普通の国」ではないことを物語っているのではないでしょうか。日本においては、日本国憲法が日本の平和学を豊かにし、また平和学の学問的成果が日本国憲法のより豊かな理解を可能にしてきたという関係。本稿筆者には、これこそが、“唯一の被爆国、日本”としての核廃絶へのとりくみとともに、日本オリジナルの平和学のように思えてなりません。

尚、本書の構成と執筆者は以下のとおりです。
序章 日本から発信する平和学 池尾靖志(京都精華大学准教授)
T 歴史から日本を診る 
第1章 軍事化する日本 池尾靖志(京都精華大学准教授)
第2章 戦後日本のあゆみと平和運動の役割 安斎育郎(立命館大学教授・同国際平和ミュージアム館長)
第3章 歴史問題の現在と解決の道 安斎育郎(立命館大学教授・同国際平和ミュージアム館長)
U 政府の政策を斬る
第4章 日本の軍縮・不拡散政策 松村博行(立命館大学非常勤講師)・佐藤史郎(龍谷大学アフラシア平和開発研究センター博士研究員)
第5章 日本の「人間の安全保障」政策 池田丈佑(東北大学ジェンダー法・政策研究センターCOEフェロー)
第6章 日本のODA政策 川村暁雄(チュラロンコン大学客員教員)
第7章 日本の地球温暖化政策 山岸尚之(世界自然保護基金ジャパン自然保護室気候変動グループ長)
第8章 日本の人権政策 川村暁雄(チュラロンコン大学客員教員)
V 平和創造と主体形成
第9章 戦後日本の平和教育 村上登司文(京都教育大学教授)
第10章 日本国憲法からのメッセージ 安斎育郎(立命館大学教授・同国際平和ミュージアム館長)
終章 平和創造の主体形成―「憲法を守る」から「憲法で守る」へ― 安斎育郎(立命館大学教授・同国際平和ミュージアム館長)
他 上野友也(日本学術振興会特別研究員)コラム執筆

 蛇足ながら付け加えると、本書巻末に資料として付された日本近現代史略年表も、平和学習と平和教育に大変役立つ内容になっています。
当研究所が来月より開講する連続講座U「憲法の考え方」でもその第5回で「平和主義ということの考え方」をとりあげます。憲法の理念を深く学ぶために、ぜひご活用いただきたくご案内します。

【書籍情報】安斎育郎・池尾靖志編 法律文化社 2007年11月(定価 本体価格2,400円+税)

 

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