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特集「法は人間をどう捉えているか」

K・T

法律時報08年1月号で「法は人間をどう捉えているか」という特集が組まれています。
座談会「法における人間像を語る」(石川健治東京大学教授・憲法/瀬川信久北海道大学教授・民法/只木誠中央大学教授・刑法/町村泰貫北海道大学・民事訴訟法/後藤巻則早稲田大学教授・(司会))を冒頭に、所収論文は以下のとおりです。
「消費者のパラドックス―『法は人間をどう捉えているか』企画の趣旨を兼ねて―」後藤巻則教授
「憲法学における『人間』について」矢島基美上智大学教授
「刑法における人間」安田拓人大阪大学准教授
「医事法における人間像」手嶋豊神戸大学教授
「偶然人―不確実性から偶然性へ」瀧川裕英大阪市立大学准教授
「国際人権法における『個人』と普遍的な人権保障」高佐智美獨協大学准教授
「社会保障法における人間像」菊池馨美早稲田大学教授

“法における人間像”とは。一見漠然とした抽象的なタイトルのようでありながら、時代に呼応する極めて具体的な問題意識が、その背景にあります。
市民革命によって成立した近代法体系では、法主体として理性的・合理的な“強い”人間が想定され、自由権的人権が第一義的に重視されていました。やがて資本主義経済の浸透により社会的な不平等や矛盾が深まると、社会権的基本権という概念と、社会的に弱い立場にある者(典型的には労働者)・集団を法主体として想定する社会法という分野とが誕生します。そして、グローバリズムと新自由主義的政策とが席巻する現代という時代。
「自立・自己決定」が、充分に検討されることなく「自己責任」とイコールで結びつけられる風潮がある一方、他方で消費者・高齢者・障害者・医療の場における患者、などといった具体的な人間像に光をあてて法的関係が整序されつつあります。それは、座談会で瀬川教授が言われるように「『法における人間像』の変化は、人間が変わったからでなく、法がそれまで捉えていなかった人間関係を捉えるようになった」(p.7)からなのでしょう。
では、日本国憲法は人間をどのように想定し、憲法学はそこに描かれた人間像をどう捉えてきたのか。この問題に迫るのが矢島教授の論文です。この論文では、憲法13条を根拠とする“個人主義”(自己中心主義ではない)から出発した人間像が当初はそのまま受容された背景を明らかにしつつ、その後改めて「人格的自律の存在」としての人間像(佐藤幸治教授)や樋口陽一教授の「個人の自立と自律を前提とし、自己決定の結果に責任を負いつつ公共社会をとりむすぶ」“強い(強くあろうとする)”人間像などが提示された議論が紹介され、その論点が整理されています。

これらを概観するとき、法の捉える“人間”の内実をより豊かに把握することで、人権保障のあり方をより充実前進させようという方向性がみえてくるように思われます。3月より開講する連続講座U「憲法の考え方」でも、その第2回では「人権というものの考え方」をとりあげます。憲法と人権のありかた、本質に関わる問題への理解をより深める機会として、あわせてご案内いたします。

尚、法律時報本号には、「沖縄戦『集団自決』検定意見をめぐる状況と憲法学」(高作正博琉球大学准教授(「今週の一言」書籍紹介「沖縄から憲法九条を守るために」でご紹介しています)や、「今週の一言」「いまこそ人権としての社会保障の確立を」でご登場いただいた小川政亮教授の理論や同「『人権としての社会保障』確立へ不断の努力を」でご紹介した井上英夫教授の著作に触れた「(連載)21世紀の社会保障法研究に問われるもの―権利論の再構築の視点から(8)社会保障裁判運動と権利論」(山本忠立命館大学教授)など、必見の論文が多数掲載されています。

【書籍情報】法律時報2008年1月号 特集『法は人間をどう捉えているか』日本評論社

 

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