法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です

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書籍『国際立憲主義の時代』

K・T

立憲主義―この言葉が、法律の専門家ではない人たちの間にも膾炙するようになってきたのは、ここ1、2年のことでしょうか。もしかしたら、それは近年の憲法「改正」論議の“おかげ”かもしれません。日常生活のなかで、私たちは民主主義を実践し、体感する機会は比較的あっても ― 学級でクラス委員を択ぶとき、地域の自治会で予算を決めるときなどなど ―、立憲主義を意識することは稀だったからです。それが、「改憲」論が喧しくなって初めて、立憲主義という価値を見直すことになったように思えます。立憲主義とは、その意味で、いまある憲法体系が危機に見舞われたときに、改めて一般の人々に自覚される価値なのかもしれません。

国内の法体系においては、立憲主義とは、端的に「国家権力に縛りをかけるもの」と理解されています。では、国際社会における立憲主義とは? 誰(何)が主権者で、誰(何)に“縛りをかける”のか? 論点は、多岐にわたり、より複雑な様相を示します。本書はそれを、現実の国際機構と国際情勢に即しつつ、その歴史的経緯や、法と機構を支える思想を検証することで、一つずつ解き明かしてゆきます。

T 1 国際立憲主義とは何か(書き下ろし)
  2 国連の≪二〇〇年≫  『法律時報』95年5月号
  3 正義の人道の法構造  『法律時報』02年5月号
  4 多国間主義と法の支配  『世界法年報23号(二〇〇三)』04年
U 5 思想としての国際機構  『岩波講座 社会科学の方法 Y』94年
  6 国際機構と民主主義  坂本義和編『世界政治の構造変動2』95年
  7 国際機構と平和波動  『岩波講座 世界歴史 25』97年
  8 国連法体系の展望 『岩波講座 現代の法 2』97年
V 9 平和に対する権利 『自由と正義』89年5月号
10 日本国憲法・国連憲章・立憲主義 『法律時報』04年6月号
あとがき

本書に収録された論文の初出は、過去18年間にわたるものですが、1本を除けば全て湾岸戦争以降の時期の論考です。とりわけ、アフガニスタン攻撃と対イラク戦争を経た今、“法の支配”がゆらぎ、“多国間主義”がゆらぐなかにあって、「国際立憲主義を考究することは、いつでも必要であったし、現在はとりわけ必要になっているのである。」(p.17)
本書著者最上敏樹国際基督大学教授の著作は、既に当欄で書籍 『NHK人間講座 いま平和とは』―「新しい戦争の時代」に考える」書籍『いま平和とは』などをご紹介させていただいています。今回とりあげた本書では、私見ながら、第6章「国際機構と民主主義」がとりわけ印象的でした。民主主義の問題を「国連の民主化」問題に矮小化せず、国家主権、人民主権、民族自決権の原理とその角逐の問題に及ぶ論考は、知的刺激に満ちています。「国家主権の人民主権への還元」という新しいかたちの国際民主主義を確保するために、「視野を国連のような政府間国際機関だけに限定せずに非政府間国際機構へと拡張しておく」(p.176)。非政府組織(INGO)の人権救済活動の可能性と展望については、他の章でも一貫して著者の問題意識に関わっています。
巷では「国際貢献」「国際協力」という言葉が、今いかに安易に、概念についての吟味もなく使われているかに気づかされます。

憲法に関して原理的なもの、思想的なものを迂回せずに理解する努力が求められる昨今、本年3月より当研究所の開講する連続講座U「憲法の考え方」もそのための機会の一つとして是非ご活用ください。

【書籍情報】最上敏樹著 岩波書店 2007年12月 (定価 本体2,800円+税)

 

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