法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です

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書籍『今こそ学校で憲法を語ろう』

K・T

コラボレーションの妙味、を存分に活かした憲法関連書籍が刊行されました。憲法・政治学者、教育学者、そして学校現場で奮闘する教師の皆さん。各々専門領域が異なっても、国民投票法が成立した “今こそ、憲法を語らなければ”という今日的な問題意識を共通項に、とりくまれた協同作業の成果です。

「私たちには、憲法を『もっとよくする』不断の努力が必要」で、「その前提に『語ろう』は不可欠だ。それゆえ、本書はタイトルを、憲法を『変える』でも『守る』でも『教える』でもなく、あえて『語ろう』としている。」(p.200)

「序」で、佐藤功教諭は、憲法教育が暗記学習に堕してはいないか、知識としての憲法とは別に、教室の中で憲法理念からかけ離れた状況は生まれていないか、と問いかけ、本書が「学校で堂々と憲法を語り合う」きっかけになればと述べています。
第1章「『国民投票法』で学校はどうなる?」では、渡辺治一橋大学大学院教授が国民投票法=改憲手続法の狙いと問題点を論述し、とりわけ公務員・教員の「地位利用」と「組織的多数人員買収・利益誘導」の規定にスポットが当てられます。これは、先に当欄でとりあげた特集「改憲問題―刑事法学からのアプローチ」(法学セミナー11月号)においても“地位利用のシミュレーション”として論考されていた点です。渡辺教授は、上記の規定が運動の萎縮効果を狙ったもので、自主規制が危惧される今こそ「教師たちの集団的な憲法学習の実践を高いレベルにあげておくことが大切」(p.35)だと説かれます。
第2章「憲法論議と若者教師たち―若者と憲法を語ってみた」は、若手教師が憲法問題についての本音を語り合う座談会と、それに対する“ベテラン組”のコメント、そして再度、“若者”の側から座談会を終えての感想(メール文)、で構成されています。若手教師の座談会でのやりとりは、率直そのもの。彼らの本心を引き出せたこと自体がひとつの成果と感じさせられます。
第3章「今こそ学校で憲法を語ろう」では、現職教師の憲法教育実践例として、ワーキングプア問題を切り口にした授業や、生徒自らの手になる模擬国民投票など事例が豊富に挙げられています。当研究所・伊藤所長による講演会を企画するなどしている立命館宇治中学校高等学校の杉浦真理さんの教育実践(関連情報)も掲載されています。同時に、ジャーナリスト西谷文和さん(以前当欄でご紹介した『報道されなかったイラク戦争』執筆者)、司法書士小牧美江さんらが学校で行った講演などの経験をも報告されているところに特色があります。ことに小牧司法書士が「日本国憲法が自分たちの日常にどのようにかかわっているのか」(p.163)、憲法の「触感」を伝えたい、という思いを、「不断の努力」によって自らの自由と権利を保持せよという憲法12条(前段)に触れながら述べておられることは印象的でした。
尚、本章では当研究所所長の「伊藤真の明快!日本国憲法」(ナツメ社2004年)や「高校生からわかる日本国憲法の論点」(トランスビュー社2005年※)も紹介されています。
「終章にかえて―新たなる序章へ」では、まず第3章の教育実践例に対し、竹内常一國學院大學名誉教授のやや“辛口”の批評が展開されますが、またそれに対する現場教諭の応答があり、そこから議論が進化・深化してゆく流れをうかがわせます。

こうした点を含め、本書自体が憲法12条の能動的な実践ではないかと考えされられました。今後、「子どもの権利条約」をも視野に入れた論議の発展が期待されます。

【書籍情報】渡辺治(一橋大学大学院教授)・佐藤功(大阪府立緑風冠高等学校教員)・竹内常一(國學院大學名誉教授)編著 青木書店 2007年11月(定価 本体価格1600円+税)

※ 伊藤真著「高校生からわかる日本国憲法の論点」は、こちらからご注文いただけます。

 

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