法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です

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書籍『検証・日本の貧困と格差拡大―大丈夫?ニッポンのセーフティネット』

K・T

 現代を、“情報(化)”社会と言い表す慣わしはすっかり定着した感があります。しかし今、“格差社会”という言葉までが同じような感覚で捉えられてはいないでしょうか。貧困層の増大が格差の拡大につながっている今の日本の状況に不安を覚える人は少なくないはずです。何が起きているのか、どうすればよいのか。
本書で日本弁護士連合会は、こうした問いに答え、貧困の連鎖を断ち切るために何が必要なのかを提言しています。

本書の構成は以下のとおりです。
 はじめに
 第1章 今、日本で何が起こっているのか?
 第2章 現代日本の貧困の実態
 第3章 日本のセーフティネットは大丈夫?
 第4章 セーフティネット拡充の取り組み
 第5章 諸外国の生存権保障の現状
 第6章 シンポジウム「現代日本の貧困と生存権保障」
 第7章 あるべきセーフティネットへの提言
 資料

生活保護110番などの実践活動を通して得た独自の全国データ、生活保護裁判の歴史をたどりその意義と課題を簡潔にまとめた判例・裁決例の紹介、多重債務問題へのとりくみ、ドイツ・イギリス・韓国の社会保障制度についての海外現地調査など、日弁連ならではの実績と成果が提言に生かされ、本書は類書にない特長を備えています。同時に理論面でも、憲法25条の生存権の基底に憲法13条前段の個人の尊厳原理が存在し、個人の尊厳原理の具体的意味が同条後段の幸福追求権であることを踏まえた生存権保障制度であるべきこと、さらに「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」批准国としての法的義務として、国籍にかかわりなく国内全ての個人に「適切な生活水準の権利」を実現すべきこと、などについて言及され、示唆に富む内容です。
海外と比較しても際立って日本の捕捉率(註)は低いといわれています。しかし、日本の行政がそもそも捕捉率を含む貧困調査を行なっていないことから、正確な実態が把握されず制度改善に生かされていない状況に対し、貧困調査を行政の義務として法定すべきであるとする提言。また捕捉率を向上させ、社会保障を必要とするすべての人に“権利として”実現されるために、制度についての(1)広報義務(2)情報提供義務(3)助言義務を行政庁に課し、ドイツの例を参考に、利用者の側からは行政機関に対する「助言請求権」を確立すべきとする提言。これらの提言は、本稿筆者には大変新鮮なものに映りました。

この間当サイトでも折に触れ格差にかかわる問題を扱ってきました。今週の一言「いまこそ人権としての社会保障の確立を」(2007年8月27日)書籍『格差社会 〜何が問題なのか 』(2006年12月11日)書籍『格差社会とたたかう―<努力・チャンス・自立>論批判』(2007年10月8日)憲法関連裁判情報「ホームレスってどんなひと?」同「三郷生活保護裁判 (1)」日本全国憲法MAP「朝日訴訟(憲法MAP岡山編)」「堀木訴訟(憲法MAP兵庫編)」などがそうです。
これからも、格差と貧困の問題を人間の尊厳原理に根ざす生存権保障の課題として、憲法理念の重要な柱と位置づけ、「権利としての社会保障」について理解を深めてゆきたいものです。

【書籍情報】日本弁護士連合会編 日本評論社 2007年5月(定価 本体価格3,000円+税)

(註)捕捉率:制度を利用し得る人のうち、現に制度を利用できている人が占める割合のこと。

 

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