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憲法情報Now<憲法関連書籍・論文>

 

書籍『国際平和と「日本の道」―東アジア共同体と憲法九条』

K・T

前回当欄では、歴史の再検証によって日本国憲法に至る道に新たな光をあてる『情報戦と現代史―日本国憲法へのもうひとつの道』をご紹介しました。今回ご紹介するのは、日本国憲法から未来に向かう道を探ることを企図した書籍です。
序章(望田幸男同志社大学名誉教授執筆)で、「世界的・国際的な関連と動向から、そして比較の視点から、さらに中国・朝鮮半島の動向と情勢へと考察を収斂させていきながら、それぞれの立場から、これからの『日本の道』を考えようとしたものである。」(p.9)と示されるとおり、本書は以下6つの章で構成されています。

1 国連の論理と「日本の道」―平和への指針(田中則夫龍谷大学法科大学院教授執筆)は、憲法と国連憲章の論理の異同を確認しつつ、それぞれの護るべき規範―憲法九条の論理と、国連憲章においては軍事同盟の根拠たる集団的自衛権の論理ではなく敵対関係を前提にしない集団安全保障体制の論理―に即した行動を貫くところに、平和秩序回復の道筋を展望します。先に当欄でご紹介した杉江栄一著書籍『日本国憲法と国連―日本小国論のすすめ』も、本章の論旨を補強するでしょう。 
2 グローバル世界の形成と「日本の道」―「多国籍企業段階」の経済論理(杉本昭七京都大学名誉教授執筆)では、世界経済が「多国籍企業段階」にある中、アメリカの日本経済への介入が憲法改正の圧力になっていることが明らかにされます。「各国政府は自国の多国籍企業のためにもっぱら働く。」(p.81) との指摘は、“多国籍企業”が、決して“無国籍企業”ではないことを窺わせます。
3 二一世紀の世界を拓く「日本の道」―改憲に反対する六つの理由(藤岡惇立命館大学教授執筆)では、現下の情勢の下で九条改憲にふみきることの危険性と、二一世紀の世界にとっての日本国憲法の価値とを、六つの側面から論証しています。本章末尾には「憲法九条のアイデアを世界全体に広げてゆくチャンス」(p.105)として、08年5月開催予定の9条世界会議についても触れられています。
4 ドイツから「日本の道」を考える―「ヨーロッパのなかのドイツ」(望田幸男同志社大学名誉教授執筆)は、戦後のドイツ(統一前は西ドイツ)と日本の軌跡とを比較しながら、ドイツが「ヨーロッパの上に立つドイツ」ではなく、基本的には“過去の反省”をふまえて「ヨーロッパのなかのドイツ」の道を選択した経験に学び、日本が“大東亜共栄圏”ではない、“東アジア共同体の一員”としての道を歩む展望を示します。
5 中国から見る「日本の道」―隣の大国とどうつきあうか(大西広京都大学大学院教授執筆)
6 朝鮮半島情勢と「日本の道」―「北朝鮮脅威論」を克服して、日朝国交正常化を(浅井基文広島市立大学広島平和研究所所長執筆)
の二つの章からは、中国そして朝鮮の立場から日本がどう見えるのかということを改めて認識させられます。「アメリカの『北朝鮮脅威論』と日本国内で喧伝されているそれとの間にはあまりにも大きな懸隔がある。」(6章p.169)との指摘は、「『改憲』という独自の目的のために逆に国家関係が無理に悪化させられる危険性」(5章p.144)を裏付けるものと言えるのではないでしょうか。

本書全体を通して、日本がその一員として東アジア諸国家との絆を深めることと、憲法9条を護ることとが、相互補完関係にあることを再確認できるでしょう。

【書籍情報】望田幸男・田中則夫・杉本昭七・藤岡惇・大西広・浅井基文著 昭和堂 2007年10月刊行 (定価 本体2600円+税)

 

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