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書籍『日本国憲法と国連―日本小国論のすすめ』

K・T

本書は、国連と日本国憲法のかかわりに焦点をあて、その「立脚点の異同を確かめつつ国連協力のありようを冷静に考え」(p.17)、現行憲法の平和条項があたかも国連協力への障害となっているかのように主張する「新しい改憲論議」の問題点を抉り出す試みとして、本年4月に刊行されました。

国連はその憲章に侵略国に対する加盟国による軍事的制裁を位置づけ、紛争解決の手段としての武力行使を一定の条件の下で認めており、戦争放棄と戦力不保持を定めた日本国憲法とは、平和へのアプローチの仕方が異なります。では、日本国憲法は国際社会の現実にそぐわない、ということでしょうか。そうではない、ということを本書は以下の構成の下、論証していきます。

序章 世界大戦の教訓
第一章 国連憲章の平和保障―侵略を許すな
第二章 軍縮と安全保障―安全保障観の転換
第三章 国連の平和維持活動―戦わざる兵士たち
第四章 人間の安全保障―非軍事の世界
第五章 日本国憲法の平和主義
終章 世界のなかの日本国憲法

国連の安全保障システムは、冷戦時代は大国の拒否権発動により、冷戦終結後は超大国となったアメリカの単独的支配により、憲章の予定したようには機能してきませんでした。しかし本書著者は、中小諸国・非同盟諸国の国連内外での地位と役割に着目します。
「非同盟が大国間軍縮・軍備管理交渉に異議を唱え続けなかったら、軍縮とくに核軍縮が国連の主要な議題となることはなかったであろう。」(p.56)その努力のひとつが1978年の第一回国連軍縮特別総会で採択された『最終文書』として結実。ここに、「半世紀にわたる国連の実戦の結果として『軍縮による安全保障』という新しい概念が生まれた。」(p.64)
さらに興味深いのは、国連活動ではありませんが、本書は欧州における軍縮努力の具体例として「ヘルシンキ・プロセス」を採りあげていることです。「1973年以来ヘルシンキとジュネーヴで会議が重ねられて、1975年8月にヘルシンキ『最終文書』が採択され」「その後の諸会議(継続会議)で追求されてきた欧州における緊張緩和と協力をめざす一連の交渉過程はヘルシンキ・プロセスと呼ばれている。」(p.67)この「ヘルシンキ・プロセスの進展」にも「中立・非同盟グループを形成するヨーロッパの中小諸国が大きな役割を果たした。」(同)軍事活動の透明性と公開性を高めることにより欧州の非戦システム構築に寄与したヘルシンキ・プロセス。対立や紛争を(武)力で解決するのでなく、相互信頼を築く努力によって解決することが可能であるという実証例として、部分的にではあれ日本国憲法の理念の具体化として、記憶に留めておく価値があるのではないでしょうか。

「中小諸国には非軍事の世界へ接近する方法を探究してきた多くの足跡がある。」(p.185)日本のもてる力を「非軍事の世界と平和のために役立てることが、小国日本が国際社会に貢献できる道である。」(p.187)大国として国際社会の責任を果たすためには、日本も武力行使を含めた国連活動に参加すべきとする小沢一郎民主党代表の発言とは、根本的に発想が異なるようです。

【書籍情報】杉江栄一著 かもがわ出版 2007年4月(定価 本体価格1,800円+税)

 

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