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書籍『憲法9条の思想水脈』

K・T

憲法9条の水源を遡る、試みです。憲法9条とは何かを知るためには、その思想や理念が生み出された歴史を辿り直す必要がある。憲法9条はけっして突然変異的なものではなかった。著者はこのように考えて本書を展開します。

まず源流へと遡れば、何が見つかるでしょうか。鎖国を解いた近代日本は、ヨーロッパ起源の国内・国際体系を受容することで国際社会の一員になりました。そこで日本は初めて“国家”“戦争”そして“平和”という概念に出会います。これらの概念の成立起源まで遡ればそこに、ルソーやカントらの水源としての思想を見つけることができます。また日本国内の思想家たちも、「欧米の平和思想の受容」から出発して、自らの平和思想を紡いでゆきます。例えば自由民権運動の理論的リーダー植木枝盛(植木枝盛については当サイト「「疑」を胸にひめて−植木枝盛のリアリティ」参照)の「万国共議政府」や「宇内無上憲法」構想などが紹介されています。

次に、世界にとっては戦争違法化への端緒ともなり、同時に日本国憲法9条にとってはその枢要な水脈とも位置づけられるのは、国際連盟の発足と不戦条約の締結でしょう。第一次大戦後国際連盟が設置されたことは、「勢力均衡による平和」維持から「国際機構による平和」形成への大きな転換でした。しかしながら、連盟規約は戦争禁止において徹底性を欠き、「不戦条約は、その不完全さを補完すべく」第1条において「各自の人民の名において」戦争放棄を明記した、と著者は述べています。
また、この不戦条約成立に大きな影響を及ぼしたアメリカの戦争違法化運動において、重要な役割を果たしたのが哲学者ジョン・デューイでした。「戦争によらなくても紛争解決が可能となる方法を探り出すことを国民一人ひとりが自ら追求し、国民の抗しがたい要求の結果として戦争を廃絶していかないかぎり戦争は廃絶されることはない。このように考えるとき、デューイらの戦争非合法化運動が、国民運動として展開されなければならない必然性があったことが了解される。」(p.190)
ここに、私たちは国民主権と平和主義とは不可分であるという、日本国憲法の思想水脈に直結する水源を見出すことができるでしょう。のみならず、著者はこうも指摘しています。「日本国憲法の起草にかかわったアメリカの人々が、不戦条約がこうした国民運動の熱気のなかで批准される時代に学生生活を送ったり、法律家や行政官として歩みはじめていた事実は、憲法9条の思想水脈を考える場合には無視できない歴史的背景であろう。」(p.191)

豊かな水源を誇る憲法9条、これを世界の海へと向かう滔々たる流れにしていくのか、それともダムで堰き止め流れを淀ませてしまうのか。岐路に立っているように思われます。

来年には「9条世界会議」が開催されます。9条について深く学び考え、世界に発信していきたいと思います。

【書籍情報】山室信一著 朝日新聞社(朝日選書) 2007年6月 (定価 本体1300円+税)

 

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