法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です

法学館憲法研究所

Mail info@jicl.jp
 
今週の一言
憲法情報Now
 憲法をめぐる動向
 イベント情報
 憲法関連裁判情報
 シネマ・DE・憲法
 憲法関連書籍・論文
 ■今日は何の日?
憲法Voice
研究所・客員研究員紹介
中高生のための憲法教室

憲法文献データベース
日本国憲法全文
リンク集
 
事務局よりお知らせ
賛助会員案内
メールマガジン
ご意見フォーム
サイトマップ

憲法情報Now<憲法関連書籍・論文>

 

書籍『「改憲」の系譜―9条と日米同盟の現場』

K・T

本書は、共同通信社が04年5月から05年2月まで配信した憲法企画第1弾「非戦の回廊」、並びに05年5月から06年月3までの同第2弾「この国の座標」、この二つの企画に、その後の状況を踏まえた新たな取材の内容も加えて再構成の上、刊行されたものです。
“はじめに”に、日米同盟強化と改憲の流れが加速する中「憲法との距離を測りながら、交錯するさまざまな思惑や感情も含めできるだけ多くを検証した。」(p.13)とあるとおり、折々の状況にかかわった政治家、外交官、そして防衛庁(当時)幹部らなど“登場人物”の“顔が見える”ことが、本書に緊張感を漲らせています。“「改憲」の系譜”が、生身の人間の営みであることを知らされるのです。同時に、関係当事者らがどれほど真剣にとりくんでいようと、“選択した日米一体化路線が、本当に日本国民の安全につながるのか”という根本的な観点が脱落していることも。

前回当欄でとりあげた書籍『集団的自衛権とは何か』。そこでは、“初めに日米同盟ありき”といわんばかりに集団的自衛権行使に道を拓こうとする、自立性を失った現在の日本外交のありようが浮き彫りにされていました。今回の本書では、その結果として、いまや英国より頼りになる同盟者日本とアメリカが評価するまでに一体化した米軍と自衛隊、その実態が歴史的経緯も含めて明かされます。自衛隊の“軍隊”機能は全て米軍の戦略を支えるためにあると言っても過言ではないでしょう。本書の構成は以下のとおりです。
第1章  9条を超える同盟 
第2章  制服組の台頭 
第3章  兵器商戦
第4章  改憲の水脈
第5章  同盟の島、沖縄

私見ながら印象深かったのは、「第3章 兵器商戦」の中で描かれた元防衛大臣久間章生氏の言動です。最初の防衛庁長官時代から日米ミサイル防衛共同開発の先鞭をつけ、武器輸出3原則見直しの急先鋒であり、ミサイル防衛システム構築の立役者の一人であった姿がつぶさに。原爆投下“しょうがない”発言が、決してその場の思いつきで口にされたものではなく、“確信犯”だったのだと改めて納得しました。
いま一つは、沖縄普天間基地移設をめぐる問題(「第5章 同盟の島、沖縄」)。生命と財産を脅かす米軍基地は要らないという沖縄の人々の切実かつ当り前の要求を、いつのまにか(?)米軍再編の課題にすり替える日米両政府に、深い憤りを覚えずにはいられません。これらの問題への理解を深めるため「憲法60年の軌跡を映像で検証!―平和ドキュメンタリー映画上映会のご案内―」(第3回上映会「原爆の図」「基地はいらない どこにも」9月22日)をご案内します。

小泉政権以後、有事法制整備や対テロ特措法など「長年の宿題」が次々と片付けられ、「当時の防衛庁幹部でさえ『何かぶつかっていない壁があるはずだ』と戸惑ったほどだ」(p.96、p.235)。憲法「改正」に向けた流れも、同じ文脈の中にある、と本書は指摘しています。安倍首相の辞任という新たな事態の下、明文改憲にせよ解釈改憲にせよ、状況は予断を許しません。いっそう警戒を強める必要があるでしょう。

【書籍情報】共同通信社憲法取材班著(執筆者 堤秀司・豊田祐基子) 新潮社 2007年5月 (定価 本体1400円+税)

 

[今週の一言][憲法情報Now][中高生のための憲法教室][憲法文献データベース][事務局からのお知らせ]
[トップページ]