法学館憲法研究所は、憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です

法学館憲法研究所

Mail info@jicl.jp
 
今週の一言
憲法情報Now
 憲法をめぐる動向
 イベント情報
 憲法関連裁判情報
 シネマ・DE・憲法
 憲法関連書籍・論文
 ■今日は何の日?
憲法Voice
研究所・客員研究員紹介
中高生のための憲法教室

憲法文献データベース
日本国憲法全文
リンク集
 
事務局よりお知らせ
賛助会員案内
メールマガジン
ご意見フォーム
サイトマップ

憲法情報Now<憲法関連書籍・論文>

 

書籍『集団的自衛権とは何か』

K・T

 昨今、集団的自衛権をめぐる情勢が緊迫しています。憲法「改正」の焦点が、9条2項の削除と海外展開可能な自衛軍の明記にあることは言うに及ばず、安倍首相は憲法「改正」に依らずとも集団的自衛権の行使を可能にする解釈の変更を探るべく、本年4月に私的諮問機関として「有識者懇談会」を発足させました。
 この情勢にあって刊行されたのが本書です。著者は関西学院大学法学部豊下楢彦教授。著書『安保条約の成立』(岩波新書 96年12月)、編著『安保条約の論理』(柏書房 99年4月)などの他、「北東アジアの危機と安全保障秩序の変容」(法律時報 03年6月号所収)等の論文も執筆されています。

 本書では、まず国連憲章51条の成立経緯の検討によって、個別的自衛権と集団的自衛権が峻別されねばならないという認識が国際的に確立されていった過程が明らかにされます。一方、この認識に逆行するのがブッシュ・ドクトリン。またその尻馬に乗るがごとくひたすらアメリカとの「一体化」に邁進する小泉・安倍政権のありようが、戦後日本の安全保障をめぐる日米間の様々な駆け引きを含めた歴史的経緯に照らしても、日本の自立的外交とは言い難いものであることが浮き彫りになります。
 さらに著者は、今日の世界が直面する脅威の性格の分析を通して、集団的自衛権の行使によって日本が被る危険性に警鐘を発し、最後にそれに代わるべき日本外交のオルタナティヴを示しています。

 本書で特筆すべきは、著者の論旨が、特定の理念・イデオロギーから出発するのではなく、あくまで現実の国際政治、パワーポリティックスの動向を見据えたところで論理展開されることでしょう。だからこそ、「不安定きわまりない途上国の指導者たちや諸勢力を『敵の敵は友』といった短絡的で狭隘な目的と利が印のために“手段”として利用し、その結果新たな『脅威』が生み出される」(p.160)という「脅威の再生産」構造への言及にも説得力があります。
 そして、著者が示すオルタナティヴについても、同じことが言えるでしょう。武器輸出三原則を活かした「国際貢献」、国連安保理決議への依拠、アメリカの軍事拠点とされている沖縄を平和戦略の拠点に転換する道筋などの提言には、アメリカが世界の全てと思い込まされてきた蒙が啓かれます。
 集団的自衛権問題の本質に迫り、現状と展望についての考察に欠かせない1冊です。

 尚、雑誌世界9月号に掲載された阪田雅裕前内閣法制局長官のインタビュー記事「集団的自衛権の行使はなぜ許されないのか」は、集団的自衛権の政府解釈変更をめぐる安倍首相の発言が、法治主義に反し、国際法と国内法の相違を理解していないものであることを確認する上で参考になります。併せての閲読をお薦めします。

【書籍情報】豊下楢彦著  岩波新書 2007年7月 (定価 本体780円+税)

 

[今週の一言][憲法情報Now][中高生のための憲法教室][憲法文献データベース][事務局からのお知らせ]
[トップページ]