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書籍『あなたは戦争で死ねますか』

K・T

 本書冒頭から憲法尊重擁護義務の話で始まります。第一部著者斎藤貴男さんは、安倍首相の年頭記者会見での「私の内閣で憲法改正を目指したい」という憲法99条を踏みにじった発言を批判。「絶えずアメリカの戦争に付き従い、彼らとともに罪もない人々をぶち殺しまくっては資源や市場をかっさらう“衛星プチ帝国”」(p.55)化を完了しようとする日本の現実。
本書は本年8月にNHK出版より刊行されたばかり。2007年上半期までの最新情勢が反映され、「戦争で死ぬ覚悟」が必要になったという時代認識がタイトルの所以でしょう。
第一部「この日本を再び戦争のできる国にはさせない」(斎藤貴男さん)
第二部「日本の友人たちよ。基地持って帰ってから、またんメンソーレー」(知念ウシさん)、
第三部「一粒の平和の種をまこう」(沼田鈴子さん/広岩近広さん)
の三部構成です。
さて、第一部で斎藤貴男さんはアメリカを神のように絶対視する日本の政治家について「究極の植民地根性」(p.55)という言葉を使っていますが、その日本が今なお“植民地”扱いをしている“沖縄”。その地に生きる知念ウシさんが第二部で語る言葉は痛烈です。
「『日本人が基地を持って帰るということ』は、日本人が沖縄を植民地にして利益を上げること、植民者であることをやめる具体的な実践行為だ。」(p.118)基地を沖縄から「本土」に移転せよ、という主張にはすぐに頷けない人も多いでしょう。けれど、著者の本意は「これまで、沖縄に押しつけ見ないできた自分のものをちゃんと自分で持ってみて、その上で本気でどうするかを考えてほしい。」(p.119)というところにあるのでしょう。基地問題を改めて考える上でも、「憲法60年の軌跡を映像で検証!―平和ドキュメンタリー映画上映会のご案内―」をお薦めします。
しかし、根本的な、そして最終的な解決のために何が必要になるのか?
その問いに答えてくれるのが第三部、ヒバクシャ沼田鈴子さんのお話です。原爆により左足切断を余儀なくされた彼女は、被爆の語り部として国内に限らず、海外へも出かけて自らの体験を語ります。「彼女は静かに立ち上がり、そして深々と頭を下げた。『みなさん、申し訳ありませんでした。許してください』すると鈴子の周りにどっと人々が集まった。」(p.165)被爆し左足を喪った彼女が、加害者として、アジアの人々に謝罪する姿。その言葉を待っていたと駆け寄る被侵略国の人たち。
 沼田鈴子さんはかつて自ら命を絶とうと思いつめたこともありました。そのとき被爆アオギリに出会い、生き抜くことを決意。その種は、平和の種として国内外の三〇〇〇カ所に植えられ、被爆アオギリ二世が育ち、三世が芽吹く。「『平和の種は、一粒ずつまくしかありません。私の証言は一粒の種まきです。』沼田さんの持論である。」(p.177)
 このくだりから、ジャン・ジオノ著『木を植えた男』、荒れはてた地を緑の森によみがえらせたエルゼアール・ブフィエの半生を描いたこの作品を、想起せずにはいられません。一粒ずつ、一本ずつ。加害と被害の立場双方から、理解しようとする努力と誠意。迂遠にみえても、それこそが人の意識を変え、政治を変える根本的・最終的解決へと結びつくのではないか。そのようなことを考えさせられます。

 なお、著者の一人である斎藤貴男さんには以前当サイトでも語っていただいています。

【書籍情報】著者:斎藤貴男・知念ウシ・沼田鈴子・広岩近広 日本放送出版協会 生活人新書230  2007年8月 (定価 本体660円+税)

 

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