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書籍『憲法はまだか』

K・T

誰もがその結末を知っていても、なお小説(フィクション)として面白い、という小説があります。確定している史実を、人間の血の通った歴史として改めてひもとく面白さ。
日本国憲法制定過程とその顛末を、1945年8月15日を起点に、日付を追いながら描くジェームス三木著『憲法はまだか』。本書には、歴史にかかわった人々の姿や当時の空気が、さりげないディティールの描写で生き生きと映し出されています。
敗戦後の日本という国の、これからのあり方を定める一大プロジェクト。このプロジェクトに携わった人々は、その立場に大きな隔たりがあっても、野心に満ちて、胸をたぎらせる一つの時空間を共有していたことがうかがわれます。以前当欄でご紹介した書籍『白洲次郎の日本国憲法』、白洲もまたその中の一人であったことはいうまでもありません。
まずはGHQ民政局内での草案づくりの過程での激しい議論の応酬、次いで日米「怒号の対決」。新しい憲法の「受胎告知」から“産みの苦しみ”に至る経過は、本書の中でも圧巻です。GHQ案を頑強に否定し、天皇主権の国体護持に固執する日本側の憲法策定の中心人物松本蒸治に対して、宮沢俊義教授が次のように述べるくだりには、胸をうたれます。
「『押しつけとはいえないでしょう。我々はナショナリズムにこだわりましたが、あの憲法案は、インターナショナルですよ。国家という概念を飛び越えて、人類の理想が示されています。戦争を放棄して、平和国家を建設するという、空前絶後の条文には、心を洗われました』(中略)憲法学の第一人者である宮沢は、崇高な平和理念に、魂をギュッと鷲づかみされた。」(p.278〜279)
本書ラスト近くで「筆者は憲法第九条の『戦争放棄条項』に、心を洗われる。お前よくそこにいたな、がんばってるなと、抱きしめたいくらいだ。」(p.424)と述べているのは、著者の憲法に対する想いと、宮沢教授のそれとが響きあっているかのようです。
冒頭「人はみな歴史の中継ランナーである。」(p.7)と書き出し、「人はみな、歴史の中継ランナーである。」(p.425)と結んだ著者。同じに見えて文章の一箇所だけ異なりますが、この異なるところに、次世代にバトンを託そうとする著者の息遣いが潜んでいるように思えてなりません。

本書は、2002年4月角川書店より刊行された単行本が文庫化されたものです。気軽に手にとれるようになりましたので、当欄で取り上げました。敗戦記念日を前に、夏休みの読書としておすすめします。尚、本書著者ジェームス三木さんは、映画「戦争をしない国 日本」の賛同呼びかけ人のお一人です。

【書籍情報】ジェームス三木著『憲法はまだか』 角川文庫 2007年4月刊行(定価本体667円+税)

 

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